思い出のlog



[2] 自己PR Name:辻村柏 Date:2012/03/06(火) 21:56 [ 返信 ]

(綺麗な満月の夜──こんな綺麗な夜に自室に居るのは勿体無い、そんな変な言い訳を思い付いては同室の仲間には気づかれないように自室を出た。外に出れば、予想範囲内ではあったが冷たい風が身体に染みる。ふるり、と小さく身震いするものの、大して気にする事もなく、長屋の縁側へと腰を下ろした。綺麗な夜空を見たいなんて、言い訳に過ぎない。ただ単純に眠れなかっただけ──性格上、其れを素直に認めるのは癪で、己の脚を腕の中に抱え込み、顔を伏せると長い髪が少しだけくすぐったかった。其の時、茂みが動く音がした。常人には感じ取れないような微小なものではあったけれど、己とてくの一、其の微小な変化に気づかぬわけが無かった。否、今の変化よりずっと前から己は、気づいていた。確かに、近くに人影が居る事を──。なのに、警戒一つせず、無防備な姿を晒しているのは、きっと其の人物が己が良く知る人物である筈だから)──…いつまで隠れてるつもり?それとも…このまま居ないフリを続けるの?…悪趣味だなあ(いつものように軽い口調で、言葉を紡げば其の人物がすぐに己の前へと姿を現した。其れは─否、彼は己が愛する人。「いつから?」そんなありきたりな質問を投げ掛けられると、伏せていた顔を上げ、悪戯を企む子供みたいな笑顔を向けるだけ。己はいつもそう─肝心な事は曖昧に誤魔化してしまう。そのせいか、己の本心を表す事が酷く下手になった。物事を素直に受け止める事が出来なくて、ひねくれ者──今更な話だけれど。前に居た筈の彼が隣に腰を下ろし、体温が明らかに先程より近づいた感覚を受けたのならば、緩く彼へと視線を向けた。己の曖昧な行動や自由奔放な部分を受け止めてくれた。奥深くまで──そんな彼の隣は、無条件で心地良かった。眠れないのか─?先程とは違う、もっと優しい質問。視界に己の好きな彼の表情を捉えると、素直に頷いてみよう。其の先は何も言わずに、頭を撫でられる。再び上げていた顔を伏せてしまい乍)子供扱いは、やめて欲しい…んだけど……──(また、素直じゃない一言。可愛げが無い──そんな己に自己嫌悪を感じつつも、直せない。曲がってしまった性格を戻すのは容易な話では無くて、いつまで経っても進めない。そんな己に、彼は「ちゃんと成長してるよ。」なんて優しい言葉を掛けてくれる。其の優しさを感じる度に、辛いと思い、そして、幸せだと感じる。周りの女の子達のように可愛く接する事は出来なくても、ちゃんと己という一人の存在を受け止めてくれる、彼が好き──。内心から感情が溢れてくる─微妙に間の空いた距離感が、妙に寂しく感じられて、止まらなくて、不意に手を伸ばせば彼の腕に擦り寄った。己のとっている行動を考え直して、顔を真っ赤にしたって今更戻れない。ならば、今は手放す必要は無い──変な理屈を己の中で完成させては、少しの間だけ、少しの距離をゼロにしよう。冷たい風によって、冷静になれば物凄いスピードで彼から離れ)ごめ…!あ、ちが…これは…その…うん、ちょっと夜風が冷たかったから!キミに風邪引かれても困るし…だから!断じて……甘えたとか、寂しいとか…そうゆうんじゃなく…(視線を逸らせば、長い髪で耳まで赤い事実だけは隠してくれる筈。もう、己とて何が言いたいのか分からない。ただ、恥ずかしい気持ちで頭がグラグラする。冷たい筈の風が心地よく感じられる程度には、体温が上昇している。未だに視線を逸らしたまま)…早く、戻った方が良い。忍たまがくのたまの長屋に居るなんてバレたら…一大事だよ?私は、……大丈夫だから(きっと、彼は己の微小な変化に気づいて来てくれたのだろう。其の気持ちは、凄く嬉しい。だからこそ、早く彼を此処から離れさせなくては──「わかった。じゃあ、おやすみ」なんて言いつつ、一瞬にして消える姿。なのに、赤いままの耳を己の手で抑え、)…バカ……──有難う、…って面と向かって言えなかった、な(はあ─とため息をついては、立ち上がり。さっき彼の腕に擦り寄った時の体温を思い出すものの、首を横に振って、赤い頬を誤魔化すかのように自室へと戻るのだ。次、会う時どんな顔をして会おう──そんな他人からしたら、笑ってしまうような小さな事を真面目な顔をして考え乍、夜は明けていく──。)

[1] 自己PR Name:善法寺伊作 Date:2012/03/06(火) 21:54 [ 返信 ]

――ちょっ …ちょおおおぉぉっ!?まま ま まままっ……???!!(ギラつく太陽が気温を上げる真夏の空の下、引き攣った悲鳴が言葉になる事なく溶けて消える。忍術学園のとある一幕。委員会活動中である筈の善法寺伊作の叫びが遠く響くのは、最早授業終了の鐘が鳴るように極当然の事件だった。うっかり癖のドジレベルもあるにはあるけれど、其れ以上にまるで引き寄せるように善法寺を襲うものは、"不運"以外に説明しようがない。小さなものから大きなものまで、日々呼吸するように善法寺を見舞う不運は、いつしか善法寺を不運の代名詞のように扱っていたけれど、今日も今日とて、ただ保健室へ向かう廊下を歩いていただけの緑青の装束に、何処からともなく叩き付けられたバレーボールが高速で襲いかかって来たのだから何か憑いているとしか思えない。何故己ばかりがと、考えた事も過去にはあったけれど、今は其れさえ止めてしまった。度重なって見舞う善法寺の不運を不幸だと憐れむ者もいたけれど、善法寺自身は事も無げに否定する。不運を認めてしまえば不運が本当に善法寺を捕えてしまうように思えたけれど、運が悪くとも確かに得るものがあったから――、)う、んぅ……。――  ちゃん…?(己の名を呼ぶ声を聞いて、確かめるように彼女の名を紡ぐ。顔面に受けた衝撃は視界も思考も眩ませて、正常な判断をさせてはくれなかったけれど、心地良く胸に浸透してゆく不思議な音色だけは、間違えようもなかった。閉じた双眸の奥を焼く陽射しを遮った影にほっとしながら、案ずる気配に安らいで、穏やかな心地で意識が揺れる。―心配を掛けて喜ぶ己は恐らく性質が悪い。けれど誰かが手を差し伸べてくれる度、善法寺は幸福を、幸運を感じずにはいられなかった。――其れが想いを寄せる彼女からであれば、尚の事。密かながら想いを通わせ合う彼女が怪我を確かめるように善法寺の頬に触れたなら、伝わる熱は善法寺をひどく安心させてくれる。触れた先から熱を持って、其の儘溶け合ってしまいそうで、其れが恐ろしくも愛おしい。沈殿する意識の中でそんな心地良さに身を委ねて意識を手放そうとした、其の時。善法寺を呼ぶ声が、何故か遠くから耳に届いた。 何故だろうか。案ずる音は同じなのに、丸でピントがずれたカメラのように、ゆっくり、ゆっくりと、距離を変える。不思議な感覚。触れた手の平が離れる気配がして、無意識に引き止めようと手を伸ばせば、)まって もうすこし この、まま…――。(――――今度は間近で、善法寺を呼ぶ其の声が降る。其れに肩を揺らしながら、ぱちりと開いた双眸が映すのは紛れもなく彼女だったけれど、思い描いた姿とは何かが違った。違和感の正体を探りながら、離れてしまった指先を追った眼差しは戸惑いを滲ませて答えを探す。そうして、不意に吹き付ける寒風に身を震わせ――違和感の正体が、意識を起こす。覚醒させた冷たさは葉のない木を揺らして善法寺の頬さえ容赦なく冷ました。そうだ。すべて、当然だ。今は夏じゃない。善法寺は初めから、 冬 の 庭 に い た ん じゃ な い か ―― 。)ああ、そうか…。――ごめん、少し気を失っていたみたいだ。いやあ、油断してるつもりはなかったんだけど、小平太のアタックは相変わらず予想外だなぁ、あっははは。…きみには迷惑かけたね。助けてくれて、ありがとう。(身を起こしながら、指先に触れるのは砂の感触。忍術学園の廊下から落ちた先ではなく、最初から其処に――大川学園の花壇の前にいたからだ。夢と現が混濁する意識を繋いで、砂のついたセーターを払う。嗚呼、なつかしい ゆめを見た。溢れて零れてしまいそうになる想いを押し込め、目前の彼女と重ねてしまう夢を苦笑で誤魔化しながら、こんな所で何をしているのかと問われてぱちり、瞬く。そうして唇に乗せるのは、何事もなく常浮かべる穏やかな笑み――)…ああ、実はねこっそり薬草を育てているんだ。え?はは、そうそう、整備委員会の管理する花壇なんだけどね、少しだけ場所を借りさせてもらってさ。食べられる草とか、ハーブとか…、いろいろ試しつつね。上手く育ったら使えるだろう?予算が少ない分、こういう所で工夫しないと。…って言っても、半分は趣味みたいなものなんだけど。(友人が委員長を務める整備委員会の管理下に手を伸ばしておいてあっけらかんと笑う。其の堂々とした口振を聞けば誰もが許可を取っていると思うだろうけれど、全くの無許可だったのだから善法寺の厚顔さも知れるだろうか。普段は人が好いと言われる癖に、存外したたかな此の男。問題を咎めたとて、留三郎なら許してくれるよ、などと反省微塵もなくのたまう事だろう。けれど一見にしてそんな底の黒さが窺えないのは、平素の温厚さに加え其れ以上に目立つものがあるからに他ならない。今だって――薬草って…と言い辛そうに呟く彼女の指先に導かれ視線を花壇へと移したなら、広がる光景は無残にも荒れた其の―、)あ ああぁっ!!? そんな どうして…、あぁ、あぁ……、さっき倒れた時にボールと一緒に潰しちゃったのか……。可哀想に…。――…いや、で でも大丈夫だよっ! ほら、この草は案外逞しいんだ。だからまた暫くすれば元気になってくれるはず。…はは、この程度で済んでよかった。今日は、ラッキーだったよ。(力なく笑う善法寺は、一般的にはツイてないとしてしまうだろう其れとて小さな幸運として片付けてしまうのだから日々の慣れとは恐ろしいものだ。そうしてそんな幸運ついでに、折角こうして彼女と話せている好機を逃すまいと彼女を盗み見れば、浮かんだ下心のまま、彼女を下校に誘おうと口を開く――のだけれど、)ねえ、…あの さ、(言葉を紡ごうとした瞬間、「危ないっ!」と叫んだのは誰の声だったのだろう。善法寺は其の正体を知る事なく、本日二度目の、夢に沈んだ――。)


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