思い出のlog



[56] 2012/03/02 (Fri) 21:59 Name:柏 Date:2012/03/08(木) 21:52 [ 返信 ]
→(雪降る真っ白な冬──薬品の匂いに包まれつつ、愛しい彼と)

(障子を開ければ、視界いっぱいに白銀の世界が広がるような季節。呼吸を繰り返す度に、白い息が舞う──寒さ厳しい中、もう随分と嗅ぎ慣れた薬品の匂いに包まれ、彼女は其処に居た。委員会の活動をする彼の後ろに腰を下ろし、背中に寄り掛かりつつ時折話しかける穏やかな時間。他愛の無い会話ばかりだけれど、何よりも春を迎えて気がした。こうして、下らない会話を繰り返す事が後どれだけ許されるのだろうか──後、どれだけ彼の傍に居る事が、愛する事が許されるのだろうか。今まで、何時だって傍に在った温もりを手放す事がそう易々と己に出来るのだろうか。背中越しに彼の体温を感じ乍ら、重い溜息を零すのだ。こんな姿は、きっと彼に心配を掛けるばかりなのだろう─けれど、此の幸せな一時を何より大事にしたいと思い立てば)…伊作、…──(彼の名を優しく紡いで、背中から離れれば作業を続ける彼の背中に、ゆっくりを抱きつくのだろうか。まるで、進む時間を惜しむかのように──優しく、けれど、強く彼を抱き締めるのだ。障子の隙間から零れる冬の冷たい風が、肌に触れるとどうしようもない焦燥感に襲われた。愛おしい、愛おしい彼の温もりを包み込み乍ら、こんなにも不安に駆られる理由など明白だ。もうすぐ此の学園をくの一として旅立つ事実も、彼が忍たまとして旅立つ事実も覆す事の出来ない運命。どうしようも無い運命だからこそ、今の己の心は複雑に渦巻いている。何時からだっただろう、巡り行く季節を少しだけ憎らしく思うようになったのは。彼と思い出を重ねていく度に、離れがたくなる──今、こうして抱き締めた身体を簡単に離せ無いように。けれど、不意に包み込んでいた身体を離せば、少しだけ困ったような顔をして笑った。)寒かった、から…つい……作業の邪魔して、ごめんね(そんな言葉を彼の背中へと向けて零すのだ。いっそ、白銀の世界のように全てが真っ白になれば良いと思い乍ら、寒さの所為か、失う事への恐怖の所為か、震える手同士を合わせて誤魔化すように、白い息を吹き掛けた──)


[57] この寒さを言い訳にすれば、いつでも手を繋いでいられるかな。 Name:善法寺伊作 Date:2012/03/08(木) 21:53
(静寂に包まれた医務室内では、焚いた火鉢が弾ける其れと、己が立てる作業の音と、それから背中越しに伝わる鼓動だけが世界の音のすべてのようだった。しんと音もなく地面を覆い隠す白は冷気を運んで人々を内に篭らせるから、医務室だけぽっかり他から切り抜かれたような錯覚を覚えながら、ぽつりぽつりと掛る背後からの声に会話を重ねて、錯覚ではなく本当に此の儘ふたりだけでいられたらいいのに と、誰に知られる事もなく胸の内で密かに想う。其れほどにゆるやかに流れる此の心地良いひと時が幸せで、愛しくて。何時までも長引かせていたい想いとは裏腹にそうやって作業の手を休めないのは、彼女の気遣いに甘えた事がひとつ。―其れから少しだけ、構い切らずに焦らしたい思いもひとつ。会話などなくとも感じる気配だけで満たされてもいたけれど、いつまでもそんな風に無為な時を過ごせやしない事は互いにきちんと理解していた。もっと、もっとふたりの時間を大切に使うべきだろうに、いざとなるとどう向き合うのが正解かなんて思いつきやしない。委員会の事ならば、こうして在庫整理の片手間に後輩たちに残しておくべき事を纏める事も容易であったのだけれど、先が何処まであるかも分からない、人知れずの睦み合いを続けてきた彼女には、何かを残す事とて重石にさせてしまうのではないかと過ぎるから、若しかしたら別れのために距離を取り始めるべきだったのかも知れないけれど。――そんな選択肢は、初めから存在しないも同然だ。何より善法寺が彼女とのふれあいを望んでいるのだから、不意に名を呼んだ彼女が背を離せば、)…なあに?(と、其の儘短く問おう。背中に感じる温もりが形を変えれば一度動きを止めて、―瞬きで小さな驚きを殺せば、おだやかに浮かぶ笑みは吐息となって落とされる。――彼女の不安に、気がついていない筈がない。いつも凛と強く、善法寺などより余程しっかりして見える彼女でも、心配性で心根の優しさに胸を痛めている事も知っている。其の不安を取り除く事が何よりの願いである筈なのに、不安にさせている原因が互いの遠くない未来のせいであるがために、解決法は容易く用意されはしなくて。何も出来ない代わりに、そっと腰に回された腕に己の手を重ねて、温もりを確かめ合う。そんな事で慰みになりはしないだろうけれど、何もせずになどいられまい。彼女が離れる動きにそっと振り返れば、浮かべられた笑みを目にして掻き立てられる想いを堪えながら、あえかに微笑む彼女に手を伸ばそう。頼りなげな様相の彼女を、此の儘放っておくなどもう無理だ。今の善法寺にはただ、彼女に優しくする事しか出来ないから―、)…急ぎの用でもないから、大丈夫だよ。ねえ、柏ちゃん。――ぼくも、さっきからすごく寒いんだ。だから暫くは、こうしていていい?(髪を梳き其の頬をやわらかに撫でては、座る向きを彼女のほうに直して、優しく、―少しだけ強引に彼女の身を抱き寄せた。こうしてやる事だって、あと何度あるか分からない。震える身体ごと抱き締める腕に自然と力を込めながら、そっと瞑目した眸の奥で、感じる温もりに改めて実感する。彼女がどれほどに愛しいか。どれほどに 大切か。)…やっぱり 好きだな。(ぽつりと零れ落ちた言葉は、彼女自身を指すようにも、こうしている行為自体を指すようにも聞こえただろうか。善法寺自身解の分からぬ其れは、結局はどちらでも同じ事。とくりとくりと速度を上げる心音など、彼女に伝わってしまえばいい―。)

[58] 言い訳なんかしなくても…離したくない、っていつも願ってるよ。 Name:柏 Date:2012/03/08(木) 21:53
(全ての世界が幸せの色へと変わった春先に、日々近付いていく時間を積み重ねていく中で、喜びよりも不安の方が大きいのは偽りようが無かった。何時かは離れるという事は、彼との想いが繋がった日に覚悟していた──つもりだった。実際、其の現実を目の前にすると子供のような我儘しか生まれてこない。彼とて己と同じ気持ちを共有してくれていると信じつつも、特別何も言ってこない彼に少しだけじれったさを感じていた。今とて、己から背中を離さなければ、あのまま何も無く終わってしまっていたのだろうか──不安という代物は、余計な思考まで起こさせるようだ。そんな己に自己嫌悪を抱きつつも、彼の名を紡ぐ己の声に優しい声が返ってくると其れだけで安心する。今までだって、これからだって此の幸せを与えてくれるのは彼なのだと、変な確証があった。違う世界で巡り会っていたら、別れの不安に押し潰されるなんて事は無かったのだろうか。最近、自室で寝る前によくそんな事を考える。そして、そんな夜はどうしようも無く彼の温もりが恋しくなるのだ。人知れず泣いた夜も、彼が愛おしいが故──抱き締めた手から、此の思いが流れ出てしまいそうな気がしたけれど、そっと重ねられた彼の手の温もりには、小さな反応を示した。驚きに似た其れを、押し殺しつつ、ただ、ひたすら其の温もりを感じようと必死。けれど、不意に何時までも縋っていては駄目だと─思って離した身体。視界の中の彼が振り返るのを確かに、視線の先に捉えつつも、未だに不器用な笑顔を崩す事は上手には出来なくて、)あ、そう、なんだ……ん?なに?伊作。──…こうしていていいって…わ、っ…!(彼の言葉には、思わず目を丸くしつつも、理解するよりも先に頬を通る温もり─ふるり、と其の行動に身を震わせ。驚きを隠せない状態のまま、言葉を返す前に引き寄せられた胸へと飛び込む事になるのだろうか。徐々に頭が今の状況を理解して、己の身体を抱き締める腕の力を確かに感じると、我慢していた糸を解くように彼へと強く抱きつくのだ。抱きついた矢先、耳元で鼓膜を揺らす言葉を聞き入れては、彼には見えずとも思わず泣きそうな、でも、心の底から幸せそうな微笑みを浮かべ。)……私も、全部……好きだよ。失うのが怖いくらい、(抱きついていた身体を静かに少しだけ離すと、彼の頬へと触れるだけの口付けを送ろう。後、何度許されるか分からない時間──何度許されるか分からない行為を、ただ、彼の為に捧げよう。)

[59] ふふ、甘やかしてばかりだとその内手がつけられなくなるかもよ? Name:善法寺伊作 Date:2012/03/08(木) 21:55
(変えようとしない穏やかさはまるで鈍い男のように善法寺の振る舞いを暈していたけれど、理解した上での其れは果たして鈍さと呼べたものか。結局のところ彼女へ辛く当たる事など出来ないのだから其れも大した持続力を持たずに、彼女が行動に出なければ、小さな戯れの形として早々に音を上げていたはずだ。―何も感じていないわけではない。何も考えていないわけではない。其れでも“どうしたいか”と“どうすべきか”は別物であって、他人を優先し過ぎる男は他人のために様子を探るばかりであったから、思う事を口に出せないままでいる。理詰めて考えるよりも基本的に感覚のまま行動する善法寺にとって、其れは決して遠慮や躊躇の類ではなかったのだけれど、未来がどうあれ、“今”の時は変わらない。変われない。与えられる温もりを享受して、そうして伝え返す指先の熱から、遠回りな善法寺の心情も伝わればよかったのだけれど、そんな曖昧な態度が彼女を不安にさせているのだと、察せるからこそ伸ばす手に躊躇はない。不器用で優しい笑顔を、やわらかに溶かしてあげたいなんて想いはいつも、上手く行きはしないのだけれど。其れでも不安の形は変えてやる事が出来ていたはず。応えてくれる其の腕が何よりも彼女の忍耐を物語り、辛抱させてばかりの関係を口惜しく思わずにはいられない。我慢しなくてもよいのだと、言ったところで彼女にどこまで届くのだろう。善法寺が言葉どおりにそう思っていたとて、そうは行かないと堪える姿を、どうして止められよう。だからせめて、こうして触れ合うひと時だけは。あえかに零れ落ちる彼女の本音を、どうか取り零さずに掬えるよう。頬に触れる熱に、ふと眦を下げながら、)――だったら、失わなくても良い方法を考えればいいんだよ。(甘言を呈するように、柔く囁く其れは其の侭彼女の唇に己の其れを宛がう事で返答を奪って、角度を変えてもう一度。触れていたくて、少しでも近くで感じていたくて、名残を惜しむかのように離れる間際僅かな距離で視線を絡めては、笑みを乗せた唇が「なんてね。」と性質の悪い冗談にしてしまうけれど。――本当は、冗談ではなくずっとずっと考えている。深みに嵌ったよごころは、元来忍としての志が高くはない善法寺にいくつかの道を作らせるにも充分だ。其の考えは、恐らくはまだ、彼女に伝えられる事はないだろうけれど。二人このまま流されて、諦める事なく恋に落ちてゆければ良いのに 難しい願いだと知って尚、願う事を止めないだなんて愚かだろうか。其れでも、永遠に彼女を手放す事のほうが恐ろしく思えるから。善法寺は―善法寺だけは、最後まで足掻き続けるのだろう。短い余生を知らぬまま、どうか 彼女が幸せであるよう、願って。)……きみの不安ごと全部貰い受けられたらいいのに。(彼女の肩口に頭を預けるようにして再び彼女を抱き寄せれば、零れ落ちた音は普段どおりのようでいてどこか悲しみに揺れていた。ただ、彼女を守りたいだけなのに。己の願いひとつ叶えられないなんて、どうしてこうもままならない。せめて今だけは、その腕の中の熱を逃さないようにと、時間が許される限り、善法寺は彼女をつよくつよく、いだき続けていた――。)

[53] 2012/03/04 (Sun) 23:52 Name:鉢屋三郎 Date:2012/03/08(木) 21:48 [ 返信 ]

→(授業中の屋上、爽やかな陽気の中眠たげに欠伸をひとつ─)

(爽やかな風の吹き抜ける春の陽気──本来なら授業中である時間に、鉢屋の姿は屋上に在った。別に此の行動は今に始まった話では無い、新年度になったからと言って習慣づいた行動を止める事など無いのだ。最近、学園長の急な思いつきで変わった周りの環境に関しても、特別驚きを見せはしなかった。男女混合クラスになったからと言って、昔よりも女子と関わり合う機会が増えたからと言って、何も変わらないのだ。ただ、其の新生活を始めてから、前は時折しか見なかった夢を頻繁に見るようになった気がする。内容も何も覚えていない夢、ただの夢の過ぎないのに──どうにも、寝付けない毎日が続く。もどかしい話。だから、こうして授業中に抜け出して屋上で一眠りをかますのだ。教師からすれば、随分と迷惑な生徒ではあるが、言った所で無駄だというのも、一年間でしっかり理解していただけた様子。もはや、己の行動を咎める人間は居なくなった──否、咎める大人は居なくなったと言った方が正しいだろう。同じ学年の友人達は、未だに己を叱咤してくれる。しかし、其れを嫌々流しつつも、心地良いと感じているのも確かな話)次の休み時間の辺りに……雷蔵が来るかもな(誰にも聞かれる事は無いけれど、呑気な声色で言葉を漏らしつつ、ふっと薄い笑みを浮かべた。次の休み時間の頃、一番気の知れた知人から連絡が来るだろうか。お咎めの連絡が──まぁ、其れまではゆっくりする事にしよう。吹き抜ける桜舞う風に、どうしようもない気持ちを抱きつつも、其の気持ちに名前を付ける術など己は知らない。ただ、なんとなく柔らかな雰囲気を纏いつつ、ふあり─と眠たげに欠伸を漏らそう。そのまま瞳を閉じて、眠りの世界へと落ちる事は無いにしろ屋上には、沈黙が流れる──)


[54] 春眠暁を覚えず。春っていつにも増して眠くなっちゃうよねー Name:浅葱尊 Date:2012/03/08(木) 21:48

(学園長の気まぐれが巻き起こした混乱の嵐は男女の浮き足立った春の陽気を呼び込みはしたが、その花を綻ばせることに精を出す気は更々無かったと言っても過言ではない。と言うのも、男女混合校舎になったその日の全校集会で“彼”そっくりの人物を見掛けたからというのが大きな理由だ。幾度も転生を繰り返し、彼を捜し続けていたとは言えこの数百年たった一人に操立てしてきたわけでもないから、年頃となれば彼氏の一人や二人─といった具合だったのだけれど、不意に見留めたその横顔に覚えず呼吸が止まってしまったのだから仕方が無い。彼かも知れない、確かめたい─そう気持ちが逸ったけれど、あっという間に彼は解散した生徒達の波に飲まれ見えなくなって、追い掛けようと声を張るも“こら浅葱!押さない駆けない暴れない!”と先生方にホールドされ─その後新学期早々説教を食らったのはまた別の話として─結局会えずじまいになっていた。学校中をくまなく探そうにも大き過ぎて、情熱に身を任せて虱潰しに行動し、やはり横顔を捉えることはあれど何らかの不運が発生し結局は声を掛けることすらままならない。そして今日も、こっそり授業を抜け出していちご牛乳の紙パックを買っていたところ首根っこを掴まれ、廊下で延々お説教をくらっていたところ─彼らしき人物が、教師の後方をすり抜けて屋上へと続く階段を上がっていくではないか。先生そこ通してと問答すれば余計に拘束時間が長引き、ようやっと解放されたところで向かうは言わずもがな─教室ではなく、屋上。シャツとカーディガンに包まれた胸と結わないままたらりと下げた青のリボンタイを揺らしながら出来うる限りの速さで上へ上へ。履き潰した上履きが煩わしい─そんなことを考えた刹那辿り着いた屋上の扉を遠慮なく開け放ち、息が詰まるほどの勢いで広がった目の前の世界にただ一人、求め続けた人の姿を見付ければきらりと瞳が輝きを増して、)──っ、鉢屋三郎!! みーーーーーーーーーーつけたっ!(その名を呼び、嬉しさいっぱいといった様子で駆け寄れば無遠慮に彼の胸元へ顔を埋めるが如く飛び込もう。最早アタックともダイブとも呼べる行動に躊躇いなどなくて、日本人女性の慎ましやかな恥じらいは何処へ消えたと問われんばかり。正に馬乗りとなった状態で顔を上げれば、)やっぱり三郎だ!尊先輩に会いたくなってこの時代に生まれちゃったの?あんたってばかわいーやつ!(この際だから待たされたことは許してあげるねと、続ける言葉は最後まで紡がれるかどうか。前世とは裏腹に喜色いっぱい滲ませた頬はどこまでも素直で─上機嫌。その三文字を携えた満面の笑みは、未だ彼を見下ろしたまま。)

[55] こんな陽気の中、授業中寝るなって方が無理な話ですよ。 Name:鉢屋三郎 Date:2012/03/08(木) 21:49

(随分と長い沈黙が流れていた所為か、何時の間にやら眠りの世界へと落ちていた。頬を撫ぜる風が余計心地良さを増幅させて、閉じた瞳が開く事は暫しの間無いように見える。──落ちた意識の中で、目の前を輝かせるのは此処最近、よく見るようになった夢。声が聞こえるだけで、他に何も分からない夢──夢という名で呼んで良いのかも不明な霧の視界の中で、何も出来ない。そうして、また、己は意識を現実へと引き戻されるのだ。瞳は開けずとも、ぼんやりとした意識は取り戻した──また、眠れなかった。なんとも言えないもどかしさから出た溜息は、勢い良く開け放たれた扉によって遮られる羽目に。堪忍袋が切れた教師でも乗り込んで来たのだろうか、と緊張感一つ表さずに瞳を閉じたままで居ると、予想外な女の声色。そして、己の名を紡がれれば、瞳を開けようと思った矢先胸元へと強い衝撃が走れば。ぱち、っと静かに其れでも一気に瞳を開けた。視界の中に、己に馬乗りになり此方を見詰める人物の顔を捉える。思わず、何も言葉を発さずに其の顔を見詰める。何度思考を巡らせても、己の中に記憶の何とも合致しない相手に、怪訝そうな顔を浮かべれば)……急に飛び込んで来て、…男に馬乗りになるなんて…──随分積極的なんだね?俺の名前を知ってる所悪いんだけど……俺は、アンタの名前なんて皆目検討も付かないんだけど。俺と知り合い?俺が忘れてるだけ?(ハッと少しだけ馬鹿にするような笑顔を作り上げると、彼女に緩い視線を送った。同学年で見た事の無い容姿だったので、後輩か先輩だろう──先輩だったら、敬語じゃ無ければいけない話だが。名も知らない彼女の事を容易に先輩と決め付け良い子ちゃん振る程鉢屋は良い性格では無い。満面の笑みで続けられる言葉には、なんの見に覚えも無い。己と誰かと間違えているのだろうか。明らかに、知り合いの人間に投げるような台詞ばかりが耳を通る。馬乗りの状態の中、かろうじて動く上半身を両手を使って起こせば、彼女との距離はグッと近くなる。そして、最後辺りに自分の事を先輩だと言う言葉が聞こえてくれば、彼女の両脇に手を掛けて、軽々と持ち上げると己の隣へと下ろすのだ。)…何の話ですか?誰かと俺を間違えてるんじゃないですかね(隣へと移した彼女に、溜息をつきつつ言葉を返すと──ぽんぽん、っと彼女の頭へと手を伸ばし、子供を扱うかのように頭を何度か撫でてすぐに手を離しては「初めまして?ですよ、俺達。」と、何も知らない声色は其の言葉を紡ぐのだ。もうあの時のように、彼女を想い幸せそうに揺れる瞳は見えない──。)

[48] 2012/02/27 (Mon) 16:46 Name:尊 Date:2012/03/08(木) 21:45 [ 返信 ]
→(くのたま六年に進級した春の午後。実現せぬ期待に眉を顰め―)

(春爛漫―その気候に浮かされた気持ちは落ち着きがなく、まどろむようでいてこの身を急かす不思議な力を持っている。くのたま五年に進級したその春の日、早めに切り上げられた授業の後で向かうはにんたま長屋。手には花弁一枚残した春の花が握られており)花占いで「今日想いを伝える」と出た!となればやはり今行くしかないでしょ!(桃色の花弁を一枚ずつ千切っては、「想いを伝える」と「伝えない」とを繰り返し、最後の花弁一枚が指し示したのは後者であった。 これぞ我が人生の好機とばかりに瞳を輝かせ歩みを早めたものだが、辿り着き様子を窺った彼の部屋には人影一つも見当たらず)…………いない。なんでいないのよ、三郎の大バカ野郎ーーーーっ!あたしの勇気返せーーーー!(ぎゃーす!と奇声の如く悲痛な雄叫びを上げたのならそれに驚いた数羽の小鳥が桜の木から飛び立って行く。それ以外は穏やかな時間が流れるばかりで、静かで長閑な空気が尊の存在を一層浮いたものにするのに一役買っていたと言えよう。想いを伝える決断をした切っ掛けが花占い、そしてその性急さを考えれば勇気を返せも何も無いはずだけれど―そこに居ない存在に八つ当たりをしたならば、長屋の上でごろり、不貞腐れるように横になった。はらりはらりと薄紅の桜の花が漆黒の髪に降ることも厭わずに、不機嫌そうに瞳を細め「……何よ。せめて一目会わせてくれたっていいじゃん」、手にした花弁一枚の一輪を空に掲げ、恨めし気に呟いた。)


[49] そんな怖い顔してると、可愛い顔が台無しですよ…──とか? Name:鉢屋三郎 Date:2012/03/08(木) 21:45
(進級初めという事で、通常よりも早く終わりを告げた授業。五年という立場──なんとも、中途半端な位置と言われれば否定も出来ない。まぁ、進級した所で鉢屋の態度が改まるなんて事も全くない所か四年の頃に比べると可愛げが減ったようにも感じる。そんな事にすら悪びれる様子も無く、こうして平然としているのだからある意味で強い心臓の持ち主を言えるだろう。同じ学年の友人達に一言だけ掛けて、学びの部屋を飛び出す。窮屈な授業ばかりしていたせいか、どうにも肩が凝る。実技の授業は明日以降だという話──どうにも、つまらない。いかにも、退屈そうな表情を作り上げると、不意に頬を撫でる風。其の風のほんのりとした暖かさに、春の陽気を感じた。そして、明るい日差しは、己の脳裏にぽつん─と一人の存在を思い出させ)──静かに、過ごしているようには思えないな(其の場にだけ響くような小さな声で零した言葉。己が五年になったという事は、彼女は六年になったという事。どうにもならない年の差は、何度も己の心に影を落とした。そんな事を気にするような人では無いけれど、どうしようもない嫉妬心を止める術など己は知らない。ただ、隠し通すのが常人よりも得意なだけ。そんな己の子供じみた思考に、溜息をついたその時──明らかに、今居る長屋の何処かから響き渡る声。確かに紡がれた己の名─、あまりにも聞き慣れた声の判断を間違う理由など無い。先程の叫びをどれだけの忍たま、くのたまに聞かれただろう。まるで、己が何かをやらかしたかのような言い回しには、どうにも困った。先程とは、違う色の溜息をつき、気配を辿っては長屋の上へと登場した。漆黒の髪の毛を広げ、明らかに不機嫌さの含まれた雰囲気を漂わせている彼女を視界に捉えつつ)──…大バカ野郎って言われるような事しましたっけ?俺。ていうか……春先早々、誤解を招くような事叫ばないで下さいよ。尊センパイ?(口角を上げて、嫌な笑顔を作り出し乍ら馬鹿にするような口調で一言。ゆっくりと距離を詰め、桜の花の散る髪の毛を一束手に取ると、するり─と優しく指を通していっては)俺に会いたいなら……もっと素直に呼べば良いのに。って言ったら怒ります?(くく、と喉元を鳴らしては、静かに彼女の顔色を伺うのだ。)

[50] …そうやって、思ってもない癖に甘い事言ってさ。馬鹿にしてる? Name:尊 Date:2012/03/08(木) 21:46
(爽やかな水色の空に薄ぼんやり咲く桜の儚さが恨めしい。本当なら、こんなパステルカラーの中で彼に想いを告げるはずだったのに。─そう心の中で一人ごちて、花弁の散った一輪を翳す。期待の大きさに比例して落胆は大きくなるものだけれど、想いを告げる云々よりも彼に会えなかった事の方が尊にとっては大事であった。新しい学年が開始される節目の日に、一目で良いから会いたかったのにと─ここで不貞寝をしたら流石に風邪をひくよなとか、そうしたらいちゃもんでも付けてやれるだろうかとか、そんな─彼にとっては凡そ迷惑であろう─事を考えた矢先。思い浮かべていた顔と合致する声が聞こえたならば、はっとして目を見張る。落ち着き払った様子で体勢を変えることはないけれど、鼓動は確かに早くなった。寝転がったまま、目線だけを彼へと向けて、)……誤解じゃないじゃん。折角あたしが遊びに来てあげたのに、留守にしてた三郎はじゅうぶん大バカ野郎だと思う。(嫌味のような笑顔に向けて、ふんとふんぞり返って言うかのような傲慢な態度を差し向ける。ほんとうは自分が会いたかっただけだけれど、まるでそれをしてあげたのだとでも言うように─けれどその不機嫌そうな表情も、彼の指が髪を梳くならば少しずつ憤りの色を変えるのか。どう考えても遊ばれているような、試されているような、挑発されているような彼の行動や言動に、桜色に色付いてしまいそうな頬を無視してぎゅっと眉間に皺を寄せ、意図的に最大級の不機嫌顔を作り出した。)…そうやって思わせぶりなことばっかり言って。─素直に呼んだら会ってくれんの?もし素直に呼んでも会ってくれなかったら、その時はめちゃくちゃ怒るけど。(どうなのよ、とじと目を彼に向けつつも、胸中膨らむ期待を消し去ることは出来ずにいた。出来るだけ彼に心境を読ませないと演技の表情で魅せ─行儀見習いでの入学とはいえ、これでも一端のくのたまであるし、一人の女でもある。表情という一点においてはひょっとしたら彼をも騙せたかも知れないけれど、彼に髪を触られるこの状況が何故だかとても面映く、徐々にたまりゆく頬の熱までは隠し通せないまま─)

[51] 馬鹿になんてしてませんよ。其処まで器用な人間じゃないです…─ Name:鉢屋三郎 Date:2012/03/08(木) 21:46
(最高学年として在る彼女だから、己よりも忙しい──から、なんて鉢屋らしくない言い訳をつけて会いに行かなかったのは、単に勇気が無かっただけ。本当は、子供みたいに我儘を言って彼女を求めたいけれど、其の行動を起こすには己は、性格が曲がりすぎてしまった。だから、逆に都合が良かった。彼女から己の名を紡いでくれた事が──会う、確かな口実を作り上げてくれた事が。勿論、そんな気持ちを形にする事は無いけれど、双眸の瞳の中で、見据えた目線には、目を細めて微笑を落とす事は鉢屋には珍しい姿なのかもしれない。鼓膜を揺らす言葉は、なんとも彼女らしい。まるで、己に好意を寄せるかのように錯覚を起こさせる言葉──彼女との付き合いの中で、此の言葉が、己を好いて発してくれてる言葉だったらどんなに良いだろう、と何度願っただろう。近づけたようで、後一歩の距離を縮める確信的な言霊は、きっとこの先現れる事は無いと──言い聞かせる事には、随分と慣れた)予め約束してたわけじゃ無いんですから…俺が居なくても、文句言われる義理は無いですよ。仕方無いじゃないですか、授業が終わったの今だったんですし?(何時もと変わらない人を小馬鹿にするような表情で、言葉を紡ぎ出す。感情を表に出さない事など、何時もの事。視界の中で、不機嫌そうな表情も見慣れた代物。だから、あえて、笑顔を返すのだ。其れが何よりも己らしい接し方だったから──だから、髪の毛に指を通す事すらも何時も通り、の筈だった。予想外に先程よりも濃く刻まれる不機嫌そうな顔色、己を真っ直ぐ見据え乍ら紡がれた言葉。一瞬、髪に指を通す手を止めて、沈黙を作り出した後に、其れを打破するかのように口を開いて)──えぇ、尊先輩に呼ばれたらちゃんと会いに来ますよ?来ないなんて、勿体無い事しないですって。……怒られるのも御免ですし。尊先輩が、俺を求めてくれるのに応えない理由は無いです(止めた指を動かし、髪の毛を少し掬うと其の髪に小さな口付けを送るのだろうか。「そうやって不意に見せる女の子らしい表情──……其れこそ思わせぶりじゃないんですか?」なんて、今度は己が真っ直ぐとした目線を送るのだ。なんて─?と、真面目さの漂う雰囲気に耐え切れずに誤魔化しの一言を発する事は忘れないのだけれど)

[52] な、…だったらもっと素直に言ってよ!解りづらーい! Name:尊 Date:2012/03/08(木) 21:47
(一癖も二癖もある彼だから、自分の方が年上なのに操りきれなくて、思い通りにならない度に感じるのは彼への気持ちとこの恋の難しさ。一体どんな人であったなら彼を意のままに操り、恋を成就することが出来るのか―考えたとて皆目見当もつかない問いを、今まで何度繰り返したか知れない。答えに行き詰まる度に不機嫌にも似た落胆が襲うのに、不意に見せる僅かな微笑が、こうしていとも容易く心の闇を晴らしていってしまうから。だからこそ彼の方が、一枚も二枚も上手だと、そう感じては心とは裏腹に眉を顰める。)正論なんてつまんなーい。…でもあれだよね、今授業終わったばっかりってことはー…授業後すぐに、あたしの声聞きつけて駆けつけちゃったわけだ?かーわいー(いいこいいこ、と、まるで子供をあやすような調子で伸ばした左手は彼の頭に触れ、優しく二度三度と撫でつけた。この時既に上機嫌に戻っているのだから心変わりの早いこと、めまぐるしく気分次第で変わる表情は彼にとっては最早見慣れたものになっているかも知れないけれど。こんな“いつも通り”や“見慣れた表情”の中、不意に作られた沈黙の時に心がざわめくのはひどく容易い出来事であった。捕まえきれない彼だからこそ、いつ本当に拒まれるか知れない。緊張の線引きを探りながら続けていたこの先輩と後輩の関係も、気に入ってはいるけれど酷くもどかしく―それでいてやはり、手放したくはない距離なのだ。強欲なくのたまは、一か八かなんて選択は、しないのだから。)……─さぶろう、(まるで忠誠を誓うかのような言葉に、まるでこの気持ちに応えるかのように紡がれるそれに、そして髪に降る口付けに目眩がしそうな程の慟哭を抑えて─ただぽつり零した音は、彼の名前ひとつ。冗談とも思えない雰囲気から一転、彼の常套句でもある誤摩化しの一句が発せられたなら感情の振り幅は大きく、まるで振子が鐘を打つが如く、猶予期間を経て迎えた時は盛大にその警鐘を鳴らす。)──…っだからあんたは大バカ野郎だって言ってんのよ!誤摩化したってね、こっちがその気だったらどうすんだっつーのよ!……っあたしは!あんたを自分のものに出来るなら、思わせぶりな態度のひとつやふたつ、簡単にやる。だってそれくらい欲しいもん、あんたのこと!あたしのものにしたい、(勢い余って起こした上体はしかし、第一声はどうにか彼を見据えて発することが出来たものの、捲し立てるように紡いだ続きは自らの手元を見つめるので精一杯。感情直情型で短気、勢いに任せて行動できる爆発力を兼ね備えた女の言葉は正に歯に衣着せぬ物言いで、馬鹿正直にぶつけてしまえば息も切れる程の勢いとなろうか。ぎゅっと瞳を強く閉じて俯けば、渇いた咽がただ一言、「…誤摩化さないで、…」それだけを切に絞り出した。)

[41] 2012/02/17 (Fri) 15:56 Name:辻村柏 Date:2012/03/08(木) 21:40 [ 返信 ]

→(夕暮れ時の海辺、一歩進めば海へ届く距離にて孤独で思うは─)

(昼間の雰囲気とは打って変わって、まるで別空間を漂わせる場所が確かに在った。昼間の海とて、嫌いじゃない。皆の楽しそうな声、水を弾く音──全てが良い心地に鼓膜を揺らして、其れは其れで満足だった。けれど、どうにも陽射しの下で遊ぶのは苦手で──始終パラソルの下で寝転がっていたのは、つい先程迄の事。個々が撤収を始めた頃、静かに起き上がれば一人、其の海辺に残るのだ。白と黒のボーダーのコンビネゾン水着の上に、真っ白のパーカーを羽織った姿で、誰も居ない海辺に佇む。ビーチサンダルと履いたまま海へと近付いて行き、もうすぐ足が入りそうだという所で其れを脱げば、歩いて海へと入って行こう。夕暮れ時とは言えども、照りつける太陽は未だに暑い。ジッとしていれば、じとりと汗が自然と流れるくらい──しかし、其れも海に入ってしまえば幾分は誤魔化しが効く。お腹くらいまでの水量の辺りで足を止めると、オレンジ色に輝く空を見上げた。昔もこうして海へと訪れた記憶がある──あの時は、手を伸ばして届く距離に彼が居たけれど、もう其の彼は今は居ない。否、居ても手が届く事は無いのだ。)こんな事なら……心も記憶も、海に流れてくれれば良いのに……──(綺麗に洗い流してくれれば良いのに。見上げた空があまりにも輝いていて、其の輝きが昔のオレンジ色そのままだから──こんな感傷的な気持ちになるのだ。視界が少しだけぼんやりとしてきた所で、視線を海へと落とせば、片方の手で目元を隠し、細波の音で誤魔化すかのように一人涙を流そう。海へ落ちる雫と共に、零れるのは)──会いたい、っ……(たった一言だった。腰まで海へと浸かり、俯く姿を誰かに見られれば心配されるかもしれない──頭で理解し乍らも、この場を動けないのは、きっと前に進めない気持ちが何処かにあるから。こんな時とて、一番に求めてしまうのは彼の優しい笑顔なのだ。変えられない、変わらない事実はあまりにも酷な気がした──、)


[42] 海に入りたくないのかと思ってた。…ひとりだと退屈じゃない? Name:善法寺伊作 Date:2012/03/08(木) 21:41

(共学化されたと言っても善法寺の環境は大きな変化を迎える事なく、クラスや委員会でもなければ女子と関わる事は大してない。勿論人見知りもなく人当たりも好い男ゆえに其れなりに顔見知りは増えていたけれど、其れ以外の者からすれば運の悪さを発揮しても笑顔で流したり、化学部員でもないのに苦臭い白衣を纏って調合に篭る男を“変人”だと敬遠するのも尤もな話。決まって紡がれる“顔は良いのに”を考えると、そんな学校での善法寺を知られていなかった去年までのほうがモテていた気がするのは気のせいではない。――詰まりは臨海学校という男女共同での行事に浮かれた雰囲気の中でもつるむ相手は決まった友人たち。加えて言うなれば保健委員としての仕事をマイペースに取り組むのみと、其れは其れで満喫の形とはいえ、些か侘しさが残るのは当の善法寺にしてみれば気付かぬ事なのだけれど。ゆえに撤収を始め宿に戻る頃にも、意識が向くのは保健委員の仕事――基、保健委員として染み付いた個人的な心配癖。皆がはしゃぐ中で一人パラソルの下から動かぬ影は少し目立って見えたから、クラスメイトの保健委員に其れとなく気にかけて貰うように頼んでいたのだけれど。戻る途中偶然彼女らと顔を合わせたところ、其の姿がなく疑問に思ったのは果たして自然な事だったのだろうか。若しかして臨海学校が負担になっているのではないかと、内面までも気に掛ける思考回路は保健委員の枠からはみ出していかも知れないけれど、善法寺にとっては“当然”の心配だったから、友人らに忘れ物を装ってひとり引き返したのは、さて今回も大きな世話となるのだろうか。ホワイトラインチェックのサーフパンツにピンクのパーカーを羽織った井出達で、さくさくとビーチサンダルが浜辺への道のりを戻ってゆく。いつの間にやら橙に染め上がる海は夕日を反射して昏く揺らめいて――、妙に懐かしい感慨に襲われたのも一瞬の事。デジャヴなんて具合的な記憶の重なりもなく、丸で昨日見た夢のような不安の波が押し寄せるだけの漠然とした感覚はかぶりを振って払い落し、―目的を果たそうと浜辺をなぞった視線がようやく彼女の姿を捉えたなら、其れまでの考えなど其れこそ吹き飛んで瞠目していた。――見様によっては、うつくしくもあった。其処からでは涙を知る事もなかったのに、けれど其れでも余りにもつらそうに泥んでいるように見えて、すこしだけ、声を掛けるのを躊躇ってしまった。―其れでも足が前に進んだのは、放っておけない想いが勝ったためだろうか。気のせいかも知れないし、なんて過ぎらせながら、波打際で歩を止めたなら、今度は躊躇う事なんかしない。)――辻村さん?どうしたの、落し物でもした?(丸で何も気付いていない体で、けれど荷物とビーチサンダルを浜辺に放り出せばゆっくりと海の中へ足を進める。若し静止を掛けられればいつでも止まれるように。ざぶり、ざぶり、浸り始めた海の温度を生温く感じながら。)

[43] 海自体は好きだよ。…──今は善法寺が居るから退屈じゃない。 Name:辻村柏 Date:2012/03/08(木) 21:41

(再会を果たしたあの日から、何も変化は無い。昔の愛溢れ幸せ満ち溢れた刻を覚えているのは、己だけなのだ。同じ学年で必然的に同じクラスで授業を受けるという毎日はある意味で酷だったけれど、前向きに考えれば彼との時間を少しでも共有出来るというもの。前みたいに気軽に話しかけられるわけでも無い──友人と楽しそうに会話したり、授業中後ろから背中を見詰めていたり、其の程度。しかし、真っ白な記憶には其の些細な事ですら幸せに感じられた。この臨海学校も、本当は彼との会話が出来る良い機会な筈─なのに、懐かしい海へと訪れてしまったからだろうか。はたまた、懐かしい顔ぶれを見てしまったからだろうか──どうにも拭いがたい感傷的な気持ちは、汗を滲ませる外的な暑さとは反比例するかのように冷たい。しかし、このまま海に居続けるのは友人達にも心配かけるばかり─今日の夕飯はバーベキューだと話をしていた気もする。ふと、そんな事を思い出しては頬を濡らす涙を不器用に手で拭い乍ら、とりあえずほんのり赤い目を落ち着かせてから戻ろうと決意した。その時、細波の音に紛れるかのように聞こえてきた声に思わず息を呑んだ。あまりにも聞き慣れすぎた声を間違う事すら出来る筈も無く、どうして─其の問いかけすらも怖くて出来ない。どうして、嬉しい筈なのにこんなにも手が震えるのだろう。其の手の震えを誤魔化し、小さく息を吸い込めば)だ、大丈夫…──え、と…夕方になって昼間より陽射しが落ち着いた、から…少し海に入りたくなって。落し物、とかはしてないから大丈夫(彼の方へと視線を向けられぬまま、静けさに包まれた空間に言葉を零していく。きっと心配して様子を見に来てくれたのだろう──其れは、彼にとって呼吸するかの如く当然の行動。もう何度も心配されて来たから、慣れている。なのに、何故あの頃より心配されるだけで心臓の鼓動はこんなにも速く脈打つのか。誤魔化したくても、誤魔化せない心の奥底の感情は、己の何よりも素直。きっと、彼の事だから何を要求しても叶えようと努力してくれるのだろう─けれど、今は昔とは違う。其の優しさに甘えてばかりいてはいけないのだ。一度深呼吸をして、くるり、と髪を揺らして振り返れば、双眸に写る其の姿に)保健委員として…心配して来てくれたんでしょ?ごめんね…──余計な心配掛けて。海に来て、懐かしい思い出思い出したら……ちょっと、感傷的になっただけなんだ(困ったかのように苦笑を作り上げ、其れでも声色はあくまでも気丈に振舞うかのように──不意に己と彼の間を吹き抜ける風に、髪を靡かせては「有難う、善法寺。」と、心配して来てくれた彼へと言葉を掛けよう。感謝と共に添えた笑顔は、昔と変わらぬ柔らかなもので。)

[44] なら敵は熱気かな?―光栄だけれど、面白い話は出来ないよ? Name:善法寺伊作 Date:2012/03/08(木) 21:42

(同じ名を示し同じように生きてきた男は、けれどあの頃より長く生きていながらあの頃のほうが深く人との繋がりを持っていた。―表面上は同様に見えても、あの頃程敏くない。其れでも彼女の不安定な気配に気付ける程度には敏感で、其れに踏み入れない程度にはまだ彼女を知らないから。名を呼び彼女が返答を音にするまで、ちゃぷり、たぷり、揺れる足音は緩やかに距離を縮めて、)――そうかい?…ならよかった。せっかく海に来たのに、遊んでおかないと勿体ないものね。昼間もずっと休んでいたようだったから、調子が悪いんじゃなくて安心したよ。(大丈夫、と届いた言葉に足を止めた。意識的にも無意識的にも、近付きすぎる事のない距離が今の一クラスメイトとしての自然な距離で。だからこそ零した言葉も心からのものだった。――涙を拭ったように見えた。何かを抱え込んでいるように見えた。けれど此れまでの付き合いでも知れた彼女のはぐらかすような態度は、ある種拒絶のようにも取れたから。だから其れを突く事はしない心算だったのだ。誰かにするのと同じように、彼女が言いたくなるまで、言える相手が現れるまでは、見守る姿勢を保つ心算でいたから。――なのに。浮かべられた笑みはやわらかなのに謝辞を述べる彼女の言葉が喉の裏を引っ掻くようで。少しだけ明かされた理由を知れた事に僅か安堵混ぜながらも、浮かべたはずの笑顔はいつもどおりとは呼べぬ複雑さが滲む、)…心配に余計なんてないよ。確かに保健委員としてでもあるけれど、クラスメイトでもあるんだから。 友達が落ち込んでいるのかもって思ったら、やっぱり気になっちゃうものだろう?(彼女には気遣われてばかりいる気がする。ちょくちょく保健室を訪ねてくれる彼女だ。確かに保健室のお得意様ではあるけれど、世間話を重ねていれば親しみを抱くのは当然の話。前世の記憶などなくとも。夢の欠片しか覚えていなくとも。いま 二人を繋ぐ縁は、再会から着実に変化しているはずたから。)ああ、もちろん辻村さんにもいろいろあるのは何となく分かるし、無理に聞き出すつもりはないよ。ただ何だか辻村さんのことは放ってはおけなくってさ…。迷惑かけてたら言ってね?どうにもそういうの鈍くって……。(ついつい深入りする言葉を掛けてしまっては、切り替えたトーンは常を目指して冗談のように明るい音をしていた。終着を茶化して浮かべる笑みは照れたような、困ったようなかんばせで。善法寺にまで向けられる気遣いのほんのひとかけでも、掬ってあげられたらと、思っていたから。)

[45] 熱気が敵…勝てる気がしないよ。居てくれるだけで嬉しいんだよ─ Name:辻村柏 Date:2012/03/08(木) 21:42

(時が巡り巡って、彼との思い出の季節も巡り巡って、何度も何度も思い出した。何時だって巡り会う事は出来なかったけれど、夢の中で出会えるだけで幸せだった。もう二度と逢瀬する事など叶わないと思っていたから、形は違えど今という時はあの頃に一番似た幸せを得ているのかもしれない。たとえ、この世界で彼と結ばれぬのが己じゃないとしても、致し方ない話。けれど、もし──もし、もう一度結ばれる為に彼ともう一度引き合わせてくれた運命が在るとするならば、と願う心に従うかのように、なんとなく暖かな気持ちになれた。後ろを向き乍ら己を気に掛けてくれた彼の言葉をしっかりと聞き止めて、胸に刻めば自然と喜びの笑顔が零れる筈)そう…──でも、私、昼間の陽射しの下ではどうにも遊ぶ気になれなくて、…夜か夕方の海に入るのが好きなんだ。ごめんね、…これからは休む時は部屋で休む事にするよ。善法寺が気に掛けすぎて、遊べなくなっちゃうからね(素直に嬉しい─気に掛けてくれていた事実も、心配してくれていた態度も、距離が縮まったような気がしたから。あの頃だったならば、この少しだけ空いた距離を彼の手を引いて、はたまた、彼が己の手を引いてゼロにする事が出来ただろう。けれど、今、其れは贅沢な願い──結局、我儘になどなれない。素直になりきれない己の嫌悪感から、妙な事を口走った。もっと違う言葉があった筈なのに、どうして、彼を困らせてしまうような言葉しか出てこないんだろう。後ろめたい心持ちの中、瞳で捉えた複雑そうな彼の表情──其れは、再会した日から初めて見た代物だった。駄目だ、此処で崩れては。感情を隠す事など慣れた事なのだから、柔らかさを滲ませた笑顔を逃がしてはいけない)うん、そうだよね…──私も同じ状況だったら心配する、から…それと一緒だよね。大事なクラスメイトで、友達だもん……──だから、そんな顔しないで。善法寺の優しさは十分伝わったから…、……私は幸せだよ。大丈夫、ホントに大丈夫(複雑そうに色を変えた彼の表情を瞳に捉えたまま、そっと手を伸ばして水の中に在るであろう彼の手を優しく掴もう。長い時間の中で空いた距離を縮める事は容易な話では無いけれど、少しずつ、少しずつ──彼が困らない程度のスピードで近付いて行けば良い。そうやって、片思いだったあの頃とて過ごして来たのだから──ただ、歩みを進め乍ら、彼の笑顔が常に在ってさえくれれば良い。彼が新たな距離を縮めてくれているように、己とて前に進めば何時かは交わる筈だから──)放っておけないって思われてるだけでも…私は、嬉しいよ。迷惑なんて…思った事一度も無い。鈍くないよ…、善法寺は今のままで十分。有りの侭が、凄く素敵だから……私は救われてばっかり(喜ばしげに落ちた笑顔は、心からのもの。声色も此処で発した初めての言葉から比べると、とても明るいものへと変化した。彼の手を掴んでいない方の手で、軽く水を弾いて、彼の顔へと当たるように調節しては──「不意打ちしてみた─?」なんて、なんとも子供らしくはにかんで見せるのだろうか。)

[46] あはは、負けるなー。…なら、辻村さんが飽きるまで付き合うよ。 Name:善法寺伊作 Date:2012/03/08(木) 21:43

(心根の優しいひとなのだろうと、彼女に対して抱いたのは彼女を知って直ぐだったように思う。話し易い空気に善法寺を心配してくれる気遣い、時折幸せを噛み締めるような笑みを見せるのに、不意に泣き出しそうに揺れる瞳、深くで何かを受け止めて大切にしているような、もがいて苦しんでいるような、――彼女の姿を捉えられないのは、善法寺がものを解していないからだと察するに容易く、出来る事と云えば茶菓子を用意して世間話をするくらいだけれど。―貰い慣れない気遣いにはこそばゆい困惑を抱きつつ、和らいだ気配には素直に安堵し面をたゆませて。)…ああ、そういうことか。得て不得手はあって当然だから謝られることではないけれど、夏とはいえ日が落ちると冷えやすいから、風邪には気をつけてね。……それと、ぼくを気にして部屋に戻ることだってないよ。辻村さんがいたい場所にいるべきだ。日の下で遊ばなくたって、みんなを見ているだけでも楽しいだろうしさ。(冗談なのか本気なのか、判じかねながらも彼女なら本当に部屋で休む事を選びそうに思えてやんわりと引き止めてみたけれど、彼女の姿が見えないほうが気にかかるかも知れないなどと過ぎった意味には気付かぬまま言葉にする事もなく。―あの頃以上に単純な男は、己の口にした言葉の意味さえ解せずにいて、ただ彼女の同意にほっとして――それから“そんな顔”と指摘されて漸く変に力を篭めた口端に気付いて、遅蒔きに知る。彼女が気を遣わないための気遣いなどではない。“余計な心配”だと紡がれた事による引っ掛かりは、つまりは善法寺が彼女を心配していたいのだと。其の居場所に価値を見出だしているのだと――そっと水中で触れた手に心臓が跳ねたのは混乱した頭では当然の事で、狼狽を隠すように片手で口元を覆えば、真っ直ぐにこちらを見つめる双眸を、善法寺は見返せないまま。)ご めん。優しさとかじゃなくって、なんというか……、ええと…、……――ああ、でも 辻村さんが無理をしていないなら、ほんとに 何より だよ…。(立て直そうと紡いだ同意は確かに本音で、けれど先を紡いだ言葉も確かだ。あの時代とうに気付いていた存在意義を、この時代では今になって知った動揺をなんとか堪えて、頼りなげな笑みに変える。自己満足に因るものだなんて、知ったってどうすればよいのか。純粋な気遣いにちいさな罪悪感を募らせながらも、己さえ励ます言葉に現金にも喜びを感じてしまうのだからつくづく性質が悪いものだと思う。)――……辻村さんはどうしてそんなに…、…っわ、ぷ…!しょっぱ…。(弱ったとばかりに浮かべられた微笑は彼女からの評価を受けてむず痒さを潜めるけれど、そんな風に彼女だけがくれる優しさはどんな風に受け取ってよいのか判らない。疑問は自然と音に成りかけたけれど、不意打ちは見事的中させてしまうのが此の男。片手で一度顔の水滴を拭ってしまえば、「そっちがその気なら…!」と真上に水を打ち上げようか。大粒の雨のような其れは直に狙わずとも彼女に―もちろん善法寺にも―降り注いだ事だろう。こちらが励まされてしまうとは情けないと思いながらも、其れまでの空気を変えるように。自然と零れる笑みは、素直に彼女とのひと時を楽しんでいるから――)

[47] でしょ?飽きるまでって…──ホント、善法寺は優しいねえ。 Name:辻村柏 Date:2012/03/08(木) 21:44

(保健室で繰り広げるのは、他愛の無いやり取りばかりだけれど、其の微かな時間が己にとってはどうしようも無いくらい幸せだった。怪我をした訳でも、体調を崩した訳でも無い人間の言葉に文句一つ言わずに付き合ってくれる姿に、見惚れるのは日々の沙汰。其れ以上を求めがちになる心を押さえつつ、日々のちっぽけな幸せに浸る事に慣れたのは、つい最近の話。彼への接し方は、昔よりも一歩引いた代物に成り果ててしまったけれど、其れでも彼を想い、恋する気持ちだけは色褪せる事は決して無い)うん、大丈夫。風邪引くと皆心配するし…──人の心配する顔は、どうにも苦手だから。気をつけるよ。…──善法寺、……そっ、か。うん、善法寺がそう言うなら…パラソルの下に居ようかな。あ、私…体調悪いとかそんなんじゃない、から…パラソルの下にずっと居ても心配しなくて大丈夫、だからね(己の行動をやんわりと引き止める言葉には、思わず吃驚した。吃驚したと言えども、ほんの少し目を見開いた程度のよく見なければ分からないような変化だったのだけれど。恋仲では無い筈の彼の、無意識に発せられる言葉は昔よりも己の心を揺れ動かす気がした。勿論、良い方向にも悪い方向にも。返答には、一瞬詰まるものの、すぐに柔らかな笑みを零して言葉を紡ごう──けれど、明らかに見た事の無いような動揺の色を見ると、思わず笑顔を崩してきょとん、と不思議そうな顔をしてしまった。曖昧に生み出される言葉も、己から目を逸らす姿も、あまりにも新鮮だったから。慣れないくすぐったさに、不意に口元に手を添えて微笑を落とした。水中で繋いだ手を離しては、)なんで謝るのー?変な善法寺……──まぁ、良いけど。…、……うん、無理はしてないから(これ以上突っ込んでしまうのは、あまりにも可哀相な気がした。まるで、苛めているかのような光景になってしまいそうな──とりあえず、視界の中に彼の笑顔を捉える事が出来たならば、安心しよう。何かを言いたげな雰囲気を感じ取ったけれど、其の言葉を聞き取る勇気は今の己には無い。ただ、もし、彼が語りだした時は素直に耳を傾ける事は惜しまない。途中で切れてしまった、否、切ってしまった言葉の先は、またいつか聞く事にしよう。見事に命中したのを確認すれば、楽しげな笑顔を深くする。しかし、予想外な反撃で、頭上から降り注ぐ水に心地良さを受け取りつつ)わっ……──冷たいけど、気持ち良いね!なんか海来たーって感じがする(珍しく子供っぽい表情で、声色明るく彼へと伝えよう。水音を弾かせて、遊ぶ姿は、まるであの頃に戻ったかのような感覚を起こさせた。)

[38] 2012/02/07 (Tue) 01:07 Name:鉢屋三郎 Date:2012/03/08(木) 21:21 [ 返信 ]
→(静寂に包まれる春の夜。月明かりの下、彼女との逢瀬の時──)

(実習終わりだった所為か、普段より幾分疲れに見舞われていたその日。同じ学年の奴らにすら、平気な振りを取り繕うのは、今に始まった話では無い。自室へと戻り、早々に着替えを終えると、同室の彼の言葉など耳に入らない程、唐突な眠りに落ちるのだろうか。──さて、どれくらいの眠りに落ちていただろうか。ハッと急に意識を現実へと戻すと、怠惰気に上半身を起こし、部屋を見渡せば─其処には、同室の彼の姿は無いわけで。其の事に関して、理由を知っているからこそ特別気に掛ける様子も無く、己も立ち上がり自室を飛び出す事にしよう。外へと出れば、想像以上に爽やかな風が吹いており、ぼんやり─とした意識を徐々にハッキリと覚醒させていくのだ。眩しすぎる程の月明かりの中、足を向けるのは迷う事無く彼女の元──。特別逢瀬の約束を取り付けていたわけでは無い。しかし、彼女ならば気づく気がした。否、むしろ気づいてくれなければ困るという話。教師達の目につかないように、くのたまの長屋へと到着すれば、彼女の自室の前にひっそり佇もう。一種の悪戯のようなもの──な筈なのに、気づかれなければ落ち込む己も居るのだろ。いつからこんなに誤魔化しが効かない程、彼女に恋してしまったのか。己にとっても、随分謎な話である)……──さて、気づくかな。良い満月だ…──こうゆう日に、アイツに会うのも悪く無い…と思ったんだがな。(此の呟きが彼女の耳に届く事は無いだろう。しかし、彼女の中の何かに届けば其れで良い。まるで、淡い片思いをする少年のような初々しい気持ちを宿しては、似合わないな─と思って、思わず口角を上げて自嘲気味な笑みを零した。片思いの時は終わった──だから、こんなに会いたいと願うのだろうか。呼び出す勇気が無いわけでは無い──けれど、己の中に妙な頑固さが邪魔して素直な一言を零す事が出来ない。だから、今もこうして待つ事しか出来ない。視線の先の障子が開き、愛する笑顔が己へと向かってくれれば良いと願うのみ。今は、ただ、一人月明かりの下で彼女を想う──。)


[39] こんな悪戯でしたら、是非とも連発して頂きたいものです! Name:深冬 Date:2012/03/08(木) 21:21
(―色の実習。艶やかに微笑んだ師の、鮮やかな紅さす唇が紡いだ其の内容に嗚呼成る程ばれているらしいと得心して、続け様、己が口付ける側だったのなら至極迅速に終えられただろうにと暢気な感想過ぎったものだが、恐らくそんな事もあの慧眼はお見通しだったに違いない。進級早々この春にして、密事が“ふたりだけの秘密”に成り切れぬ事実を若干惜しくも感じはしたが、改めてこの学び舎で彼女に習える僥倖を誇らしく思いながら、わかりましたと頷いて見せたのが夕刻頃だったか―けれど、密やかに彼を探し始めた両眼が視認したのは、幸か不幸かそろりと地を這う見慣れた毒虫で。其れからは言わずもがな生物委員を中心にそこら中の生徒を巻き込むてんやわんやの大騒ぎ、否応無しに課題へ割く思考も時間も吸い取られあれよという間に日は沈み、結局彼が実習に身を置いていた事も知らぬ儘、枕に突っ伏して難しい面持ちをつくる娘が此処にひとり出来上がった訳である。異論なしの願ってもない課題とて機を得ねば如何しようもない。明日こそは脱走―基い、お散歩を控えてくれぬものかと一匹々々の姿を脳裡に浮かべつつ、ころり寝返りを打った直後――不意に総身を駆け巡る、歓喜に粟立つ感覚。息を止めたのも束の間に、音もなく布団から抜け出せば寝衣も顧みず心の儘に足は動く。逢瀬の約束の有無なぞ、瑣末事に過ぎぬのだ。深冬の愛した男は何時だって、人を驚かせるのがうまいのだから――そう確信に充ちた胸裡引き連れ後ろ手に障子を閉めた鳶色が映し出すは、満月を背負う愛し人。瞬く間に甘やかな熱を眼へ宿し、)―素敵な月夜ですね、三郎さんっ、(潜めに潜めた声を落とす娘が微塵も迷う事無く取った行動は常と同じ。されど音を削ぎ落とした所作を以て飛び付く様に其の胸へ飛び込んだなら、結う間も惜しまれた髪が娘の背で柔らかに揺れる。)……もうっ、予告して下さったら髪だってちゃんと整えてきたのに、(最低限迄絞った声量で不平を言う口元は然し、実の所更々文句なぞ無いのだろう緩やかな弧を描く。きらきらと喜びを目一杯湛えた双眸で眼前の面を見上げ、自身より広い背へと回した腕はぎゅうと愛おしげに彼を捉えるのだろう。)

[40] 連絡しないから悪戯なんだろ?…俺は、お前を信じただけだよ。 Name:鉢屋三郎 Date:2012/03/08(木) 21:39
(唐突に会いに来る事など、今に始まった話では無い。己は気まぐれだから──其の部分を弁えて、彼女は文句一つ漏らさずに己の傍に居てくれる。まるで、当然の如く。己にとっては、其れがなんとも慣れない日々であり、幸せでくすぐったい気さえ起こるのだ。暗い夜を満月の月明かりだけが照らしてくれる、其の落ち着きのある光が妙に心地良かった。まるで、彼女との逢瀬を歓迎してくれるかのように。不意に長屋へと向けていた視線をゆるり、と回しては満月を見据えるのだろうか。一人、寂しい夜に月を見上げるのが好きだった。最近、其の行動が減ったのはきっと、寂しさを紛らわせる別の存在に巡り会ったからだろう。ふと、脳裏を過ぎった其の思考を改めて考え直すと、今も己は寂しいのか──という結論が導き出されるのは自然の沙汰。月へと向けていた視線は、常人には聞き取れぬような小さな音によって、再び長屋へと向けられる。警戒などしていなかった。此の手に掴みたい気配だとすぐに気づいたから。否、気づけない筈が無いのである。己が声を発する前に、予想の範囲内とばかりに飛び込んで来た彼女を受け止めると、やんわりと笑みを作り上げ)今日は満月みたいだな。──逢瀬にはもって来いの夜だろ?(小さく喉を鳴らしては、抑えた声色で告げるのだろうか。己を見詰める喜ばしげな表情だけで、寂しげに感じていた心は自然と暖かさを取り戻す。整えられてはいないけれど、其れとて愛おしい姿に変わりは無い彼女の頭に優しく手を置けば、ゆっくりとした手つきで撫で上げるわけで。時折、器用な手つきで彼女の髪の深くまで触れるように梳かす行動をとると)予告するばかりは、つまらない。別に気にしないな。──むしろ、寝巻きの方が……有りの侭らしくて良いじゃないか。俺の前では取り繕う必要も無いだろ(頭を撫でていた手を離し、空いていたもう片方の手と共に彼女の両頬を包み込んであげると、彼女の双眸に己しか写らないように──と、少しだけ顔を近づけ、柔らかな微笑を浮かべよう。己とて嘘も取り繕う事も彼女の前ではやめたのだ。鉢屋三郎──という人物は、己とてハッキリしているわけでは無い。けれど、彼女と共に居る時、此れが有りの侭だというのはハッキリとわかる確証が心の中に、確かに存在しているのだ─、)

[32] 2012/02/06 (Mon) 19:15 Name:善法寺伊作 Date:2012/03/08(木) 21:17 [ 返信 ]
→(晩夏、切り取られた天井の向こうで緩やかに時は流れ―)

(――夏探しの頃となりても容赦なく地中を焼く陽のゆらめきが、ぬるい呼気を絡め取る。じわじわ、じわじわと暑さを纏ってほのかに汗ばむ気配のなかでも、平生からの体温の低さが幸いしてか、それとも此の学園で動じぬ表情の作り方に慣れたか、真っ青な空を天井にした善法寺は涼しげな様相で蝉時雨を耳にしていた。夕刻が差し迫るも此の時期晴れやかな空は陽を落とすのが遅いから、其の日も落ちる軌道を描き始めた陽射しはまだギラギラと照りつけていた。――けれど。日陰に落ち着く善法寺は、のんびりと転々と空に散った雲の動きばかりを見つめて、―視界の端に映る己の足先からは、そっと目を逸らしていた。)のどかだなぁ…。(心底感慨に耽るようでいて、ある種の現実逃避は当然己の置かれている状況を鑑みれば致し方ない事だったのかも知れないけれど。誰が掘ったとも知れぬ塹壕の中で一人、今日の土は柔らかいなどと思考に裂く善法寺は日常茶飯事に嘆く事も諦めて、至って呑気であった。今日も今日とて委員会の雑務に追われ、簡単な作業も多いゆえに保健委員のみんなと分担して仕事に移ったのだけれど。備品の補充を終えて医務室へ戻る途中、番を任せた数馬は大丈夫だろうかとぼんやり考えながら移動していた所為か、何かに足を引かれるようにして、此の広い穴の中に納まっていた。幸い怪我もなく、いつもの事として片付け早々と戻ってしまっても良かったのだけれど、ちょうど陽射しが遮られる其の場所は、今日ばかりはとても居心地が良くて。土から伝う冷たさにほっとしながら、もう少し此の儘でいるのも悪くはない気がして瞑目した。まだそこかしこで、夏の気配がしていた―。)


[33] もうすぐ夏も終わりなのに、暑いね。──暑いのは、苦手だよ。 Name:柏 Date:2012/03/08(木) 21:18
(委員会の仕事で徹夜続きだった──若干、普段よりも強い眠気に襲われているところに不意の呼び出し。予想外──否、ある意味予想の範囲内の人物からの呼び出しに、眠気を誤魔化しつつ赴いた。大方、任務か何かだろう─そんな安易な考えの中、呼び出した張本人である山本シナ先生の部屋へと入室すれば、静かなる緊張感に包まれる。勿論、真面目な気持ちで話に耳を傾けていた。けれど、其の重苦しい雰囲気には似合わない口調で発された言葉には、思わず何度か瞬きを繰り返した。聞き返す猶予も無いままに、部屋を追い出されてしまうとただ、一人呆然と部屋の前で立ち尽くすのだろうか。数分、思考回路を止めた後──壮大な溜息をひとつ。あの人の言う事に文句を言う事も勿論、逆らう事など出来ない。だからこそ、厄介なのである。疲れに加えてもう一つ苦労が増えれば、自然と足取りは重くなるばかり──色の授業は元々得意分野では無かった。忍者とて、人間だから、苦手分野はある。そして、今回の課題を聞いた時に一番重症だと感じたのは、真っ先に脳裏を過ぎったのが彼の姿だった事。勿論、課題の内容の事など彼以外の誰か─なんて考えられないのは、事実だが。まるで、其の行動を望んでいるかのように──彼が頭から離れない。夏の暑さの所為だ─なんて、無茶苦茶な理由をつけて、とりあえず会いに行こうと医務室へと足を向けるのであろうか。もうすぐ、目的の場所へと辿り着こうか、という場面で不意に視界に捉えた塹壕。もはや、学園内では見慣れたものではあったが、今回は特殊な様子。今日何度目か分からない溜息をついて、其の塹壕へと近付いて行けば、身を出して中を覗き込んで)…やっぱり…──何してるの?伊作。って…聞くのも変、か。怪我してない?大丈夫?の方が、正しいね(双眸の瞳に捉えたあまりにも穏やかな姿には、思わず楽しそうな笑顔を零してしまう。己と同じ最高学年の彼だから、塹壕から抜け出す事など容易な話だろう。何時までも此処に居るという事は、怪我でもしたのだろうか──言葉こそ、誤魔化しているものの、表情には心配の色が。しかし、すぐにからかうような笑みを作り上げては)それとも、一緒に塹壕に飛び込んであげよっか?(なんて、冗談交じりな口調で告げるのか。眠気に襲われている所為か、普段より若干子供っぽい言葉口調の変化に彼は気づくだろうか。己とて無自覚な変化に。しかし、背中に太陽の日差しを浴び乍ら、なんとも涼しげな雰囲気は崩れる事は無い。ただ、後ろ髪を引かれるのは先程の一件だけ──)

[34] そればっかりはお天道さん頼み、か。涼探しも楽しいけれどね。 Name:善法寺伊作 Date:2012/03/08(木) 21:18
(閉じた瞼の奥、微かにつたう明りを頼りに意識を繋ぎ止めながら、さわさわ耳に届くこえを聞く。木々のそよぎが風に運ばれて音を落としながら、青々と茂る薫りを土に混ぜていた。――そんな涼やかな時間をひとり過ごしながら、一体どれほどの時間が経ったのだろう。ほんの数秒のようにも、数刻のようにも感ぜられながら、人の気配は遠くから感じるばかり。まるで此の穴ぼこごと世界から切り取られたような錯覚は、けれど暫くして感じた見知った気配によって終止を迎えた。気配ひとつ取ったって、近付く其れを間違える筈がない。春の日に人知れず恋仲となった相手ゆえ―そもそも長年患わせた恋のたまものか、頭上で止った気配が声を降らせるのを待ってから 瞼を持ち上げれば―、)やあ。柏ちゃんじゃない。大丈夫だよ、今日はまったくの無傷だもの。…そういう柏ちゃんこそ、こんなところでどうしたのさ?(矢張り琥珀に映し出されるのは、紛れなく彼女だった。目を開けて再び映し出した世界に存在するのが彼女ただ一人だと云う事実に、愛しげに眦を下げて問い返せば、空の色を背景に気持ちも晴れやかだ。次いだ悪戯な問いにぼんやりと其の変化を感じながら、身を捩って少しばかり体勢を上にずらせば、善法寺の答えなど決まっていた。小さく喉を鳴らして、隣をぽんぽんと叩けば。)うん、おいで。こんなところだけれど、少し一緒に休憩しようよ。土が冷たくて気持ちいいんだ。(珍しい言葉回しの変化をはっきり眠気の所為だと悟れたわけではないけれど、己に付き合ってもらう事を餌に彼女にも休息を取ってもらおうなどと考えれば彼女の反応を待つだけ。ゆるやかな笑みを浮かべつつ、人気の少ない此の場所では塹壕の中は珍しく二人きりになれそうな場所でもあったから。誰にも邪魔されない時間を求める下心も特に隠すつもりはないけれど、もし彼女が渋るようであれば腕を伸ばして引き入れようと――、)

[35] そうだね…──涼探し散歩でもする?ゆっくり出来そうだから、さ Name:柏 Date:2012/03/08(木) 21:19
(シナ先生からの課題を聞いた時、ほんの少しだけ良い機会だと感じた心持ちは昔から比べると、随分と素直な代物と化したらしい。此れも一重に彼のお陰なのかもしれない。想いが通じ合った春から未だに時間は其れ程経ってはいないものの、片思いの刻が長かった為かそんな初々しい雰囲気は己と彼の間には無いように感じた。単純に、己が甘えるのが苦手──というのも、あるのかもしれないけれど。問い掛けに返された言葉の内容を理解すれば、とりあえず安堵。塹壕に落ちる事に慣れた所為なのか、最早くつろいでいるようにも見える。己とて、見慣れた光景だった為とは言え、焦る表情一つ浮かべ無いのは正解かどうかは不明な所であるが。入り口の辺りに手を付いて、外よりも涼しげな空気を感じ取れば、心地良さそうに柔らな表情で笑いかけて、)無傷なら良いんだけど、ね?私?……あ…──あ、えと…シナ先生に呼ばれて。其の後、伊作に会いに行こうとしてた所、でした(先程の事、そして、今己の起こしていた行動の目的を彼へと告げれば、少しだけ気恥ずかしげにはにかむのだろうか。医務室へと行く用事も無くなってしまったから、己の問いへの返答次第では行動に困る所だったけれど──予想通りな返答を頂ければ、喜ばしげな雰囲気を少なからず醸し出す筈。瞳の中に愛おしい笑みを捉えつつ、伸ばされた手を掴めば、器用に塹壕の中へと降りて行くのだろうか。彼の空けてくれたスペースに着地した後、暫し考えれば、彼へとにこりと微笑んで真正面から彼の胸へと飛び込んでしまえ。心地良い塹壕の中で、彼の体温を感じれば其れ以上に幸せな空間は無いように感じた。其れでも、やはり照れ臭いもので──、)普段、私からこうゆう事あんましないから……やっぱり恥ずかしい、なあ(なんて、小さな呟きを零すのだろう。彼の言う通り、塹壕の中は外よりもずっと涼しく、過ごしやすかった。勿論、ずっと居るわけにもいかない為、此の彼との二人きりの時間は長くは続かないのだけれど。其れを改めて、思うと今しか無い─と、言う言葉が脳裏を過ぎって)い、さく…──あのさ、……此処で、口付けしてって、…言った、ら…してくれ、る?(顔を隠すように彼へと抱きつきつつ、零れる言葉は途切れ途切れ。彼に上手に伝わっているかも不明だけれど、己は此の言葉を掛けるので精一杯。夏の暑さに比例しそうなくらい、頬には熱が集まり──)

[36] きっちり水分補給してからね。涼も日陰ばかりではないだろうし。 Name:善法寺伊作 Date:2012/03/08(木) 21:19
(二人を呼ぶ関係が密かに名を変えても、大きく変化したものなどなかっただろう。今までどおり母が幼子を撫でるようにやわらかな言葉で包んで、惜しみなく与えられる愛に迷いなどない。もちろん、身を隠して触れ合う意味は、今までとは違うものとなっていたけれど。其れでも基本的には、彼女に望まれる瞬間まで待つ姿勢をみせていた。触れたいと思い手を伸ばす事も、欲しいと思い呑み込む事も、きっと善法寺にとって難しい事ではなかったけれど、―不器用な彼女を不用意に惑わす事のない距離感で、求められれば手を差し伸べて、上手く言葉にされない願いとて、彼女ばかりを見詰めてきた善法寺に斟酌する事など容易かったから。そんな微温湯のような存在である事は、さて彼女にどう思われているのかまでは汲み取れていなかったけれど。)いやはや毎度ご心配をお掛けしてます。…――そう。だったら見付けてもらえてちょうどよかったね。無駄足踏ませずに済んでよかったよ。(其れでも不自然に淀んだ彼女の言葉から、其れ以上の何かがあると悟るのは難くなかった。話の流れからすると件の師に何か言われたか―。深く考える前に放り投げた思考でも、己に用がある事は解せたから、敢えて問わずにさらり流して、そうして彼女を隣に下ろせば、浮かべられた笑みに首を傾げて――懐に飛び込んだ熱に、ふわり、彼女のにおいがした。)……どうしたの。今日の柏ちゃんは随分甘えただねぇ。(背を抱くように回した腕が、ゆるやかに彼女を撫でて上下して、僅かに速度の増した鼓動のままに熱に浸る。色事に羞恥からの苦手視を抱きながらも、時折こんな風に大胆になるのだから愛慕を詰まらせた男には堪らないものがあった。とは言えど、こうなるよりも前から耐えてきたのだ。自制は利く。だから此の儘何事もなく離れる事とて、遣って退けられぬ筈もなかったのだけれど――、閊えながらに音となった言葉にいちど意識を奪われて、一拍遅れて解した頭がすこしずつ熱を集め始めるのは致し方ない。肌を包んでいたはずの涼しさなんてどこかへ吹き抜けて、どう処したものか逡巡する善法寺を蝉がどやしつけるように啼くから、言葉を呑んだまま少しだけ身を起して指先が彼女の耳元へ滑り込めば、そっと髪に口付けよう。頼まれずとも、何時だってそうしたいと思っているのだ。許されるのならば遠慮の必要はないとばかりに、彼女の上身を浮かせれば耳たぶに、首筋に、沿うように唇を寄せて、――そうして次は、鼻先に。敢えて狙いを逸らすかのような位置は、意図したところがあったとて僅かなものだろう。丁寧に、繊細に気遣いながら、額を重ねて彼女の頬を撫でるように包めば、弛緩した琥珀は幸いを溶かして。)――次はどこにして欲しい?(無粋な問いはほんのささやかな悪戯心を覗かせて、――蝉時雨にふたり 隠される。)

[37] そっか…でも、私倒れても伊作がすぐに助けてくれるでしょ? Name:柏 Date:2012/03/08(木) 21:20
(禁忌を犯した其の日から、罪の意識が全くゼロかと問いかけられると返答に困るのは己が忍であるが故か。時折、悪い夢夜に魘される事もあるけれど、そんな時に己の心を落ち着かせてくれるのは彼の存在──思い浮かべるだけで、速まる心拍数は徐々に静かになる。そして、同時に会いたいと思い始めるのだ。どれも自然の道理──キチンと己を理解し、距離を保ってくれている彼の存在に何時からこんなにも貪欲になったのだろう。今まで色恋沙汰なんて無縁だった為か、此れが普通の感情なのかどうかも判別は不能。何も参考なんて無いから、今は此の心の赴くままに進むしか無い。今回の色の授業の事とて本当の事を話してはいけないという決まり。彼に隠し事をするのはどうにも気が引けたけれど、くの一としてキチンとしなくてはいけないのも己の信念なのだから従順になるのは当然の沙汰と言えるのかもしれない。少しだけ不自然だった言霊に関して何も触れて来ない部分からもまた、一つ彼の優しさを感じるのだ)ホントだよ…心臓がいくつあっても足りないよ。別に伊作を探す行為自体に無駄を感じたりはしないよ…──むしろ、探すのも楽しい。見つけた時嬉しいから…まぁ、見える所に居てくれるのも勿論嬉しいですけど、ね?(何時も医務室に居る彼だけれど、時折、顔を覗かせても居ない時があるのは当然。けれど、そんな時諦めるのでは無く、探しに行くのも最近では随分と楽しくなってきた。その旨を伝え乍ら、こんなにも素直に言霊が溢れるのは彼の体温をこんなにも近くに感じているからだろうか、と不意に思うのだ。背中を撫でる一定のリズムが、心地良くてそのまま眠りに落ちてしまいそうになるのを必死に抑える。何時もより耳の近くで聞こえる言葉には、恥ずかしさを隠すかのように彼の肩に顔を埋め)……たまには、こうゆう日もあるんだよ。──…眠いから、人肌恋しいの(偏屈にも近い言い訳を発するものの、抱きついた身体を離すなんて事は当分出来そうに無い。いずれは離れなくてはいけない時が来ると分かって居ても、子供みたいに縋る事をやめられない。彼に迷惑を掛けたくは無いと思う思考とは反比例するかのように其の気持ちは上昇していく──其の結果生み出された言霊に対して、何も言葉の反応が無ければ思わず嫌な汗が出た。彼に嫌な思いをさせただろうか─と巡るのはマイナスな考えばかり。嫌だ、嫌われたくは無いと弁解をしようとした矢先、耳元へと触れる指先に思わず身を震わせた。状況を理解出来ない内に、耳たぶ、首筋に慣れない感覚が伝わり、ぎゅう、と強く彼の服を掴めば顔を真っ赤にしながら──破裂しそうな程強く脈打つ心臓など無視するかのように、双眸の瞳いっぱいに彼の顔が広がる。重ねた額から、触れられた頬から、全ての感情が伝わってしまいそうな気がした。紅葉色の染め上げられた頬、生理的なものなのか目尻にうっすら浮かぶ涙を浮かべつつ悪戯心の含まれた問いかけには)──…伊作、っ…の、ばか……好き、だよ(服を掴んでいた手で彼の両頬を包み込むと、額が重なっている事で近い距離を縮めて、彼の唇に口付けを送ろう。その時ばかりは、時が止まった気がした──。)

[27] 2012/01/26 (Thu) 16:40 Name:鉢屋三郎 Date:2012/03/08(木) 21:13 [ 返信 ]

→(穏やかな通学路。遅刻の二文字など感じさせない足取りで─)

(遅刻しそうだからいっそ遅刻してゆっくり行く──なんて、同じ学年でよく双子に間違われる友人にメールを送っては、呑気な音を立てて携帯を閉じた。朝、キチンと登校しよう─なんて心持ちにはなったものの、いざ、家を出た時間を確認すれば既にこの調子である。爽やかな桜の香りが春を感じさせて、同時に、眠気を誘った。思考すら呑気なものであり。遅刻は確実──なら、今更急ぐ必要も無いと最短距離の道では無く、態と学園への遠回りな道を辿ろうと心に決めた。此の鉢屋の行動を今更咎める人間なんて居なくて、存外、自由な気持ちで毎日を過ごしている事実が其処には在る。学園長の提案で、男女の関わり合いが多くなった最近の学園生活。生活の色こそ変わったものの、己自身の何かが変わったわけでも、変わるわけでも無い。周りで何が起ころうと他人のペースに惑わされない存在位置こそが心地良いのだから。まるで、自由に咲き誇り、自由に散り行く桜の如く──不意に学園へと進めていた足を止めると、大きく咲き誇る桜を見つけて静かに其れを眺めた。意外にもお気に入りである視界の先の桜は、毎年、此の時期に鮮やかな春色をしている気がする。己には眩しすぎる──そんな柄でも無いような思った後、何の関連性があったのかは定かでは無いが、自然と零れた欠伸を止める術など無くて)ふあ、…──ねむい……今日の授業って、なんだったっけか。それ次第で、いつ学校に着くようにするか決めるんだけどな……てか、もう此処まで来ると、行く事すら面倒になってくる。困った話だね(言葉に比例するかのように声色も随分軽いもの。桜を眺める為に止めていた足を進め始めると、其処でズボンのポケットに入れていた携帯のバイブが足を揺らした。送信者は予想出来る。急ぐ様子も無く、携帯を取り出しメールの内容を見ては、二言返事だけを送ってもう一度携帯を仕舞い込んでしまおう。しかし、其のメールを見た事で先程よりかは幾分学園へと足を進める意欲が湧いた事は、嘘偽りの無い心。ゆったりとマイペースすぎる程の足取りを微笑乍も速めると、果たして学園までは後どれくらいだろうか──)


[28] 同じ日に同学園の男女が同じ遅刻中に出逢う、正に運命ですねっ! Name:糸藤深冬 Date:2012/03/08(木) 21:14

(春の陽射しが穏やかな新年度を迎えて、しみじみと抱く感想は―こうして幾百年もの記憶をひとつの身体に包含しよく発狂せず居られるものだと、一般とはずれた其れ。中々どうして己の精神力もすてたものではないと、隙あらば忍び寄る陰鬱さを払拭しては送る日々に糸藤深冬は其成に愛着を抱いている。目まぐるしく移り変わる時代を見送りながら、場面々々で相応に振る舞いながら、技術の進歩や変化する街並みに大勢の人間との出会いを、深冬は何時だって心底から楽しんでいた。懐かしの“学園長の思い付き”に対しても、同様に新たな風の気配に口元を綻ばせたものだ。異性を苦手とするとある少女が気掛かりであるという点に於いては憂慮しているものの、元より賑やかな方が好きな糸藤にとっては歓迎する展開なのだから、意気揚々学園へ到着していた筈が―夢見のお陰で寝過ごしである。完全なる遅刻だと容赦無く告げる時盤に開き直りを発揮し、春の息吹を感じながらまったりと歩を進める最中の事。曲がり角を折れた先、前方に大川学園生徒と思しき男子生徒の姿を認めれば、ひとつ明るい笑み零し、)やや、お仲間はっけーん、…じゃ、な…、…………さぶろーさん?(最愛の名を一度春の陽溜りに落としては、言葉を失い―走馬灯宛らに駆け巡るは、膨大な記憶の奥底か。終ぞまみえる事叶わず、再びこの世に幾度目かの生を享けてはや十幾年。嗚呼、やっとみつけた。たとえどんな姿をしていても、彼を見間違えたりはしないと確かな自信がこの胸にある。悠久な時を経た隠れん坊が、今、やっと終わりを迎えたのだと理解した瞬間、駆け出す足が程良い短さに整えたスカートを翻す。吹き抜ける春風に肩口で髪毛を強か遊ばせながら、減速を知らぬ儘一直線に距離を詰め―たんと地を蹴ったなら、ぶつかるようにしがみついた。そうして間違いなく本物だと訴える恋心から迫り上がる衝動に震えては、ぎゅうと彼の制服を握り込み―記憶の中のひとつの顔瓜二つだが此度は紛い物ではないのだろう其の顔貌を緩く仰いで、)三郎さんだ三郎さんだ、三郎さん三郎さん、三郎さんっ!―ゆめじゃない、(―頑なに記憶を抱えて転生を繰り返し、幾百年彼を想ったか、幾百年燻る想いに身を灼いたか。如何して、如何してと幼子宛らに胸襟で自問しながらも、只管に心は彼を探し求めて。度々見る“昔”の夢、今朝は彼と想いを交わしたあの日の記憶を辿り、覚醒時は幸福感から一変―嗚呼ゆめだったのだと抉られる様な心境で、触れられもしない彼を映し出す其の夢路がひどく恨めしいのに恋しくて。流転を確かに楽しんでいた裏側で酷く疲弊していたのも確かなのかもしれないと、歓喜が全身を彩る感覚に初めてそう自覚をしながら―さぶろうさん、其れ以外の言葉を知らぬように繰り返すのだ。再会の喜びに、彼の腕が応えてくれると、そう信じて疑わずに。)

[29] まるで、漫画みたいな運命だな…──何?そうゆうの理想なの? Name:鉢屋三郎 Date:2012/03/08(木) 21:15

(暖かな春の陽気が良い具合に眠気を誘う。其れでも、一度行くと伝えてしまった言葉を消す事など出来ない──幾分、気だるい気持ちを何とか誤魔化して、歩みを進めた。最近、妙な夢を見る所為か良い眠りにつけていない日が続いている。どうして、あんなにも似通った夢を見るのかと、疑問で仕方無い。まるで、其の記憶を忘れていけないと悟られているような気がして、流すにも流せなかった。朝起きれば、忘れてしまうような他愛の無い事──なのに、舞い散る桜の花びらですら酷く懐かしく感じられ、夢を思い出させる。其れでも、所詮夢の話だ─と割り切ってしまえば、小さく一息ついて全ては終わり。元々、難しく考える事などガラでは無いのだ。もうすぐ学園へと到着するだろうか、と──考えた矢先、己へと伝わる衝撃。誰かがぶつかって来たというのはすぐに理解出来た。不注意か何かかと思ったけれど、己の制服をキツく掴む仕草、そして、決して離れそうには無い力の強さに、標的が己だったのだと勘乍もそう感じた。しかし、視界を下ろした先に捉えた人物が異性であれば、己の顔を見詰める姿に、思わず眉を寄せて)…人にイキナリぶつかっといて、謝りも無しか。……──つか、お前誰?(其の言葉は静かな陽気の中に激しく響いた。凛とした─本心からの言葉。己の名を何度も何度も呼ぶ限り、知り合いなのだろうけれど──己は知らない。其の言葉の意味も此の行動の意味も、理解しがたい。慣れない人物には酷く冷たい──と、よく友人に言われる。其れが全面に現れた言葉。突き放しこそしないものの、暖かな言葉では、きっと無い。はじめまして、の声色。制服を掴む手を、空いている己の手で優しい手つきながらも解いてしまえば、ゼロだった距離感を少し空け)猪突猛進女……たく、俺だから良かったものの、普通の奴だったら怪我しているよ。俺の名前知ってる辺り、同じ学年?俺、女子の名前と顔はまだ全然認識無いから。…それに、んなに名前呼ばなくても聞こえてる(呆れ顔で、言葉を紡いでいく。姿を見る限り、同じ年くらいだろう──でも、他人にあまり興味関心を持たない鉢屋にとっては、彼女への知識はゼロだった。名前を呼ばれる理由なんて皆目検討も付かない。だから、優しくする義理も無いように感じた。でも、あまりにも酷すぎただろうかと後から考えれば)あー…でも、俺の名前あんな呼んでたって事は俺に何か用なのか?(と、表情こそ崩さないものの、先程よりかは幾分柔らかい声で問い掛けるのだろうか。此れが、不器用な鉢屋なりの多少の優しさの表現。しかし、あの瞬間──初めましての相手の筈なのに、どうして、名前を呼ばれた時に不覚にも心地良さを感じたのだろう。己の中に眠気が存在したからだろうか、それとも他に何か──なんて、其の理由など考える事すら途中で放棄し、彼女に緩い視線を向けよう。もう、その瞳の中にあの頃の鉢屋の「想い」は感じられないのだろうけど─、)

[30] 最重要ポイントは相手です、つまりあなたが居たらそれで良いの! Name:糸藤深冬 Date:2012/03/08(木) 21:16

(一切思い至らなかったと言えば、恐らく嘘になるのだろう。其れでもそんなのは嫌だ無いのだと水底奥深くに封じ込めた可能性は、今現実へと姿を変えて封を切り水面に顔を出したのだから、もう何方にしても詮無い話である事にかわりはなく―久しぶりだと笑いかけてくれる筈だと頑なに妄信してきた娘へ、其の結果が突き付けられたのは麗らかな陽差しの中。冷え冷えとした声の誰何がやけに頭蓋を反響して、引き離される身に抵抗一つ出来ぬ儘鳶色は大きく見開かれ、)…………そ、っかあ、(齎されたのはほんの僅かな距離だというのに、酷く遠くに感じた喉がひゅうと声なき悲鳴を堪え損なう。色濃く残る彼の記憶と重なるのに、決定的な相違点。寄越す反応端々に忘れじの面影宿し、懐かしい物言いに伴う既視感から胸が痞える心地がしても、“見知らぬ娘”を見遣る両眼が否応なく指し示すのだ。彼の中にはもう“深冬”は居ない。抉り削ぐ様な失意の疼痛は期待にふくらんだ胸をぎしりと軋ませる――其れでも、甚だ彼を諦める心算のないくちびるは緩りと弧を結び直した。)……違いますぶつかったんじゃないです抱きついたのです、詰まるところ愛情表現です。(訂正は至って明るく装われ、悪びれもなく落とされる。あの頃斯様な手間が不要だったのは言わずとも彼が了知してくれていた故だろうけれど、今はひとつひとつ伝えてゆかねばならぬのだと至れば小さく瞑目した後、瞼を持ち上げ、)忘れん坊さんですね、全くもう…でもだいすきですよ、ずうっと昔から。―わたし、前世からあなたを恋い慕っている者で、現世の恋人枠獲得予定の高等部二年生糸藤深冬と申します。最終的には一緒の苗字になるのが目標ですので以後よろしくお願いしますねっ!(記憶を持たぬ相手へ宛てるには、電波かストーカーと大差ない―否、其物な台詞を平然と連ねては、甘い愛を包含せし自己紹介を打ち上げる。春天の下花々に負けじと咲き誇った、それはそれは晴れやかな笑顔―彼にどう映ったかはさて置くとして。)あ、用事というかお誘いになるんですけどね、折角ですしこのまま道中ご一緒しませんか?積もる話もあります、それはもうたくさんありますから、お喋りしながら親睦を深めたいです、あわよくば深い関係になりたいです。ちなみに嫌と仰ろうが逃げようが追い掛けます…ああでも春の通学路で追いかけっこ、夏の浜辺には多少劣りはしますが、なかなか素敵かもしれませんね。(鞄を左肩に掛け直しつつ彼の左側をぴったりと確保したなら、どうします?とこの後を問う其れは楽しげに空を渡った。―そうして声弾ませた裏には、じくりと心を蝕む黒が未だに在り続けている。焦がれ続けた其の腕はこの想いに応えてはくれなかった、遥か昔の記憶なぞ露と消えてしまっていた――だが、“深冬”は確かに覚えている。だから彼にこの手を伸ばすのだ、幾度でも、幾度でも、)

[31] 俺が居たら…──?何それ。お前、相当な物好きだね…。 Name:鉢屋三郎 Date:2012/03/08(木) 21:16

(己の心を暖かくする陽気には不釣合いな様子に、思わず眉を寄せてしまいそうになるものの、其処は平静な顔を保った。どうして、初対面の相手にこんなにも気を遣わなくてはいけないのだろう──先程、不思議ばかりが脳裏を過ぎるけれど、其の不思議を解明しようとす問い掛けをする事は無い。むしろ、する意味を感じていなかったのかもしれない。其れくらい、今の彼は何も覚えてはいないのだ。愛情表現─なんて言葉を向けられてしまえば、今度こそ呆れ顔を一つ。それでも、心のどこかで興味を覚えた。元から心を許した人以外からは嫌われやすい性格をしている中──今とて、其の態度をとっているのに、何変わらず接してくる瞳の中の彼女にほんの少しだけれど興味が湧いた。呆れ顔を崩すと、口角を上げて緩い視線と共に)…抱きついた、ね……──へぇ、面白い事言うなお前。初対面の相手に、愛情表現って……其れはペットが、飼い主に向けるみたいなあれか?(喉元を鳴らしてからかうような声色で告げよう。恋愛感情を向けられているなんて、今の鉢屋の中には予想すら浮かぶ筈も無い──けれど、続けて鼓膜揺らす言葉には、思わず目を丸くしてしまった。あまりにも直球で、あまりにも唐突に心を揺らした言葉。一瞬言葉を返すのに詰まるものの、すぐに肩を揺らして笑い始めては─彼女へとゆっくり近寄り、其の顎に手を掛け、目線を合わせるかのように上へと向かせ、少しだけ顔を近づけると)お前が何と言っても、俺はお前を知らない。何も覚えていない。──前世の話なんて、…現代の俺にされても困る話だよ。前世から慕われているから、俺も今すぐ好きになれと?…無理な話は勘弁して欲しいな。まぁ…何を言っても構わないし、恋人枠に入りたいとでも何とでも思っていれば良いけどな…──どうなるかは、俺とお前次第。…まぁ、俺に迷惑を掛けない程度に宜しくな、糸藤(顎に掛けた手を離し、嘲笑いをひとつ─。此処まで真っ直ぐな奴は、久し振りに見た──其の姿があまりにも新鮮すぎて、全力で突き放す事は出来なかった。双眸の瞳に写る、眩しい程の笑顔には、静かに視線を外すのだろうか。己には眩しすぎる──それでも、其の笑顔に安心する己も居るのは何故なのだろう。何も分からない、)俺は、積もる話とやらは無いんだけどね。此の登校だけで、深い関係になるなんて…可能性は無いな。まぁ…お前が一方的に話してるなら、別に良いよ。聞いてるかは分からないけどね。後…俺は無駄な体力は極力使わない主義なんだよ。誰が追い掛けてくるって宣言してる奴から逃げるか、面倒くさい(何処か楽しげに問い掛けられれば、平然とした顔で言葉だけを連ねていこう。其の先、彼女の口から発される話に、耳を傾けたり、受け流したり──と、なんとも鉢屋らしい態度を取りつつ。学園へと到着すれば、いつも、つまらないと思っていた登校が普段より幾分楽しかった、と感じるのだ。そんな事決して彼女への言葉にする事は無いけれど。──しかし、授業中、不意に思い出すのだろう。衝撃的な彼女との、始めての出会いを。何も知らない筈の彼女との、妙に懐かしい感覚を。)

[20] 2012/01/26 (Thu) 07:29 Name:善法寺伊作 Date:2012/03/08(木) 21:08 [ 返信 ]

→(放課後の化学室。穏やかな陽光のように間抜けな男が一人)

おぉ わっ――!?(麗らかな陽射しが差し込み、春を唄う小鳥の囀りが耳に届く長閑な午後。始業式を無事に終えた其の日の放課後、ぽんっ、と軽い空気の破裂音が響かせて、化学室に粉が舞った。――春休みの頃から出入りを繰り返していた化学室に、朝も早くから篭っていた男がいた。帰宅部に属するにも関わらず、部員不在の化学室を我が物顔で使用する善法寺は、突然の学園運営方針の転換に驚きはしたものの、賑やかになりそうだと暢気な感想を抱いて其れなりに此の日を楽しみにしていたはずだった―のだけれど。熱中し過ぎると周りが見られなくなる悪癖が、現在調合中にあった其れに半分以上の意識を注がせて、日付の取り違えという碌でもない事態を招いていた。確かに昨日も同様に篭っていたし、晩御飯は半分以上寝ていた。朝寮を出たのも珍しく早かったし、顔馴染みの化学部員が今日に限って午前から来る様子もなかった。加えて言うなれば此の独特の空間の中、不似合いにも黒板の横に掛けられた日めくりカレンダーがどこで捲り損ねたのか昨日の日付を示したままではあったけれど、其れにしても全く気付かないと云うのも善法寺の間の悪さ―否、此の場合悪いのは目か、頭か―を際立たせているようである。HRで呼ばれたであろう名前に返事をする者は同じ学内に居ながら其の場におらず、友人たちが居所を知らせてくれていた所で欠席扱いは変わらないだろうか。其の瞬間ビーカーに乾燥させたアカザとナズナを放り込んでは、煎じながら一人頷き充足を得ていたのだから本日も平和也。――けれど空腹を覚え同時進行に手を伸ばしたのが敗因だったろうか、睡眠不足の頭は冒頭の其れを引き起こし、フラスコから雲型に噴き出した粉は空気に流され善法寺の気管を刺激して、咳き込む度更に舞う悪循環で判断力を鈍らせる。)――けほ、えっほ!…ま、ごほっ!(とは言え其れでも慣れた手際で火を消し真後ろの窓を開けば、羽織った白衣の裾を持ち上げて扇替わりにひと扇ぎして、逃げるように化学室の扉へ手を伸ばした。濁った視界に曇った眼鏡では扉を開く前に額をぶつけさせたけれど、廊下に飛び出せばしゃがんで咽る呼吸を落ち着かせて、ようやく失態を嘆くように大きな溜め息を吐き出した。眼鏡を外して白衣で拭いつつ、だらしなく廊下に腰を下ろしてしまえば、天井を仰いでぽつりと零れるのは―、)……やっぱりちゃんと家庭科室の方に行くべきだったなぁ…。(もう一つの根城を指して、しみじみと暢気な声を漏らす。あたたかな空気の中、化学室から漂うのはコーンスープの香りに似ていた。)


[21] 化学室爆発させて壊さないでね……授業でも使うんだから、さ。 Name:辻村柏 Date:2012/03/08(木) 21:09

(随分と懐かしい夢を久し振りに見た──最近見る事が無かったから、何かの前兆かとも思ったが、淡い期待を抱く事すら無駄な話だと思い返せば何時も通り学園へと赴いた。学園長の急な提案で始まった新たな学園生活。男女一緒のクラス、中高合同の委員会程度の変化だけれど、周りの人達の中には其の小さな変化に歓喜する人も居た。辻村と言えば、特別気にかける様子も無く、今まで通り学園に来て、授業を程々に受けて、放課後は気侭に過ごす。何も変わらない毎日が其処には在って、今日も今日とていつもと変わらない。授業終了の鐘が鳴り響いて、居眠りをしていた身体を起こすと─ボーっとした意識を現実へと引き戻し、己の席から立ち上がった。合同委員会活動の為に、生徒会室を訪れなくては─と思い乍も、足は陽気に足を進めてくれそうには無い。今まで女子だけの声が聞こえていたクラスの中に、明らかにトーンの違う声が混じり、其の点だけを追求すれば変化が起きているのだと感じる事が出来た。別に其れがどうこうと言う話では無い、が。生徒会室に行くのは、気分が乗ってからで良い─なんとも自由気侭な考えを勝手に己の心に提示して静かに教室を離れよう。居眠りをしていた時に見た夢が、どうにも気分を沈ませる。他人に話せばくだらない─と流されないような話が、己を困らせて仕方無い。巡り会えるわけが無いのに、たとえ、巡り会えた所で何になる。でも、もしかしたら──そんな甘えた考えを抱いては、すぐ振り払うかのように首を横に小さく振った。目的を持たずに歩いていた所為か、いつの間にか周りは静かになっていた。其の静けさが妙に心を寂しくさせたのだけれど、其の寂しさは慌しく奏でられた音によって忘れられる事になるわけで)……──は?(なんとも間抜けな声が零れた。人気が無い筈の化学室の扉が開いて中から人が飛び出して来ると、思わず進めていた足を止めてしまうのだろう。扉が開く前に鈍い音がしたのも、バッチリ聞き取れて、寝ぼけていた意識を完全に覚醒させるのに其れは十分すぎる程出来事。先程、人が飛び出してきた化学室からはその場には似合わない良い香りが漂ってくるものの、其れ以上に視線の先に居る人物に気が取られた。こうゆう場合、生徒会役員としては注意するべきなのだろうか──彼に視線を向け乍、意外にも考えは呑気。少しだけ遠い距離を詰めるかのように、其の人物に近付いて行けば、まずは心配する一言を)ちょ……キミ…、だいじょ……──(掛けようと思った。正確には掛けかけた。ただ、彼を心配する一言は、最後まで発される前に止まってしまったのだ。遠くてハッキリと捉えられて居なかった姿が、見えてしまえば時が止まる音が。会いたかった、会いたくなかった。忘れたかった、忘れられなかった──そんな存在が、眼前に現れた理由など皆目検討も付かない。あぁ、どうして、此の長い恋心を忘れられずに此処まで来てしまったのだろう──そんな後悔をする迄、後数分。)

[22] こ、…壊さないよ。たぶん。今日は、たまたまぼーっとしてて…。 Name:善法寺伊作 Date:2012/03/08(木) 21:09

(睡眠不足と呼ぶのも大袈裟だったのかも知れない。きちんと睡眠はとっていたし、集中を切らさなければそんなもの気にする性質ではなかったから――ただ、背にした窓から差し込むひかりが、うたたの夢へと善法寺を誘って、とても 切なくて暖かい気持ちを引き連れてきた。破裂音と共に霧散したゆめが、遙か遠くの過去とも知らずに。そんな事も忘れて廊下にへたり込んでいる男は、離れて掛けられた声の高さに瞬いて、一拍遅れて顔を上げた。男女別棟での学園生活では校内で女子と擦れ違う事は先ずなかったから、そうか此れからは女の子もいるんだ と改めて解せば遅蒔きながら“失態を女子に見られた”と云う事実に気付いて、羞恥が微かに頬に滲んだ。気恥ずかしさを紛らわすように打ち身に赤くなった額を手の甲で擦って、困ったように零す笑みはあの頃と変わらぬまま。)――ああ うん、大丈夫だよ。大したことにはならなかったから、すぐ収まると思う。ごめんね。突然こんなことになって驚かせただろう。(彼女の言葉が途切れた理由を知らぬ男は、其れが驚愕ゆえのものかと判じて然して気にする素振りもなく、彼女を見上げた。状況報告ののち滑らかに謝罪を選ぶ辺り、此れが初めてではないのだろう。眼鏡を掛け直して腰を上げれば、よれた白衣の裾を踏み付けてよろけた拍子に化学室側の窓枠に後頭部をぶつけるのは最早お約束で。)いっ――! ……あ ははは…、こういうの、いつものことなんだ。だから心配しなくても、化学室は無事だよ。ええっと…、きみも三年なんだ?もしかしたら明日から同じクラスかもしれないね。(悶えたのも一瞬。目尻に涙を滲ませ後頭部を摩りながらも直ぐに立て直す順応性の高さは慣れに因るところが大きく、己の事をあっさり流す口振りからも高等部では日常的なものだった事が窺えるだろう。お前の其れは最早不運ではなく不注意ではないのかと友人らに指摘された言葉に、未だに否定を持たぬまま、渇いた笑いで糊塗せば何気なく彼女の上履きに目が移って、己の上履きと同色と知るまま抱く親近感は、新学期特有の高揚感を孕んで、善法寺に自己紹介を促した。)因みにぼくは善法寺伊作っていうんだけれど、折角だからきみの名前も訊いていいかい?(此処で出会ったのも何かの縁とでも言うように。合併して初めて話す同年の女の子が新鮮で、そんな風に人好きのする笑みを浮かべて、何もかも忘れた男は此処で初めて、彼女を知る―。)

[23] たまにぼーっとしてるのが大事になるんだから、気をつけなよね? Name:辻村柏 Date:2012/03/08(木) 21:10

(どうして、この時代で無ければいけなかったんだろう──もっと前の時、彼との道を歩めていれば未来は変わっていたかもしれないのに。あの頃から、其の考えは消えてはくれない。もっと幸せな道を歩めていたのではないかと──今、目の前で繰り広げられている彼の行動を見ていれば一瞬にして思考は巡る。あの頃と何も変わらない姿─見間違える筈も、勘違いでも無い。時代こそ、己達を取り巻く環境こそ違うものの、彼という存在は何も変わっていない。其の事実に酷く安心し、涙が出そうになった。返される言葉とて、昔と変わらない。全てを愛おしいと思えた彼は今、目の前に居る。手を伸ばせば届く距離に再び舞い戻って来てくれた。この歓喜の胸の衝動をどうしよう─今すぐにでも抱きつきたい衝動に駆られたけれど、今は平静を保って。)…怪我、とかしてないの?怪我してるなら…保健室行った方が、良いと思うけど。……あ、…うん、少し驚いたか、も……此処で何してたの?(なんだろう─この違和感は。否、己は最初から感じていた筈だ。其の事実を認めたくなくて、頭の何処かで忘れ去ろうとしていた─でも、鼓膜を揺らす言葉が鮮やかすぎて、否定する事すら出来ない。歓喜に揺れていた心に影を落とすには十分すぎた。姿も行動も、全て昔の彼のままだけれど──あの頃の、己への想いは何処にも無い。信じたくは無かった。そんな事はあり得ない、と。でも、よく考えれば理解出来る話。むしろ、あの頃の事を覚えている己こそ変なのかもしれない。何も変わっていない全ては、一つの違いから全く違う代物へと変化してしまったのだ。再会に喜んでいた己の心が酷く滑稽に思えた。滑稽すぎて、笑ってしまいそうなくらい─まるで、現実逃避する子供のように一歩後退りをした瞬間、彼のハプニングを目の当たりにしてしまい。自然と声は零れ、)…──伊作、……!?化学室の…事なんか気にしないで、…もっと自分の事に注意しなよ、…!部屋はいくら汚しても戻るけど、怪我は…したら、大変なんだよ。自分の事大事にしてって……───あ…ご、ごめん。急にごめん、…わ、私の知り合いに似てて、つい、…説教しちゃって(彼の言葉があまりにも、昔のまますぎて─口から自然と溢れ出た言葉にハッとしたのは、全てを言い終わった後。誤魔化すような苦笑と共に、声色さえ動揺を示さなければ上手く誤魔化す事が出来る筈。己が恋した、恋していた、恋している──彼のままだ。でも、彼の中には己の存在はきっと無い。真っ白だ。此処で、泣き縋る事など、きっと簡単な話。でも、新たな道を歩み始めた彼を無理矢理己の元へと引っ張るなどする勇気は、もう今の己には無い。ならば、また一から始めよう。真っ白な彼の中の己の記憶に、新しい毎日を刻み込んでいけば良い。そう前向きに考えなくては、今にも崩れ落ちてしまいそうな気がした─、)明日?…いや、男女合同授業は今日、からだけど…──化学室に篭り過ぎて、日付感覚おかしくなってた…とか?……はあ。うん、自己紹介しなきゃね……っ…──善法寺、で良いかな。私は、三年の辻村柏…はじめまして、(思わず、あの頃の記憶が巡って溜息をついてしまった。本当は覚えているんじゃないかと疑ってしまいたくなる──しかし、続けられた自己紹介を聞けば、名前を呼ぶ事は許されない気がした。双眸に捉えた笑顔には、困ったけれど、今、己の中での精一杯の不器用な笑顔を浮かべれば、はじめまして─で、スタートしよう。)

[24] …御尤もで。なんだか辻村さん、お説教が板についてるね。 Name:善法寺伊作 Date:2012/03/08(木) 21:10

(僅かに淀む彼女の言葉には、警戒させてしまっただろうかと懸念しつつも其れ以上に働く思考はなく。飽く迄初対面の対応は、人見知りのない善法寺だからこそ気さくなものではあったけれど、穏やかな気遣いは誰にだって向けられるものゆえ―、)…ああ、いや。すこしぶつけたくらいだから 大したことはないんだ。こう見えて、結構タフなんだよ?…きみこそ大丈夫だった?(心配する必要はないとばかりに気の抜けた笑顔で無事をアピールすれば、驚かせた事への申し訳なさでもう一度訊ね返した。音に驚いた拍子に転んでやいないか―と考えて直ぐ己ではないのだからと思い直して、次いだ問いに思考を向ける。「摘んできた薬草を煮出して、抽出した成分をまた別の薬草の影響下に置いた場合どのような変化を伴うか…、ええと、………趣味の実験?」―“何”を説明しようとしながら、訊ねられているのが詳細ではなく概要かと思い直せば大幅に掻い摘んだ。そんな説明に意識を裂いた所為で彼女の後退にも気付かずに、後頭部に衝撃が走れば彼女の呼声に小さく疑問は浮かんだものの、次いだ忠告に言葉を奪われて疑問は霧散していった。呆れ半分に見守る友人が多い中でそういった注意は今は珍しくもあり、加えて初対面であるにも関わらずどこか懸命な彼女の様相が胸に響いて、驚くままに瞬きを繰り返した。知り合いに似ていて―そんな言葉で容易に誤魔化されてしまう程に、今の善法寺は彼女を知らない。)…ううん。こっちこそごめん。きみの言うとおりだ。心配してくれてありがとう。…優しいんだね、きみは。その知り合いのことも、すごく大切にしてるみたいに聞こえる。(お前がそんなんだと、保健委員が何を言っても説得力がないぞ と友人に咎められた言葉は尤もだと思いながらも未だに改善出来ずに苦笑が滲む。こんな風に初対面の女子にまで心配されるとはよっぽどかも知れない。緩くかぶりを振って、彼女が気まずく思う必要はないとばかりに謝辞を述べれば、己に投影してまで叱る彼女の知人を想像して和やかに琥珀を細めた。心配して貰えるのは良い事だと思えたから、不思議と落ち込んでいるようにも見えた彼女に、笑みを携えたまま首を傾ぐ事しか出来なかったけれど。)…えっ。…………あー、…うん。よくやる… から、そうかも…。――ま まあともかく。辻村さんだね。改めて、よろしく。(日付の間違いを指摘されれば、ようやく己の失態を知る。虚を衝かれて身動きを止めたのも数瞬。篭って時間感覚を失うのは此れが初めてではないゆえに、気まずげに視線を逃がして誤魔化せば、自己紹介に逃げて改めて彼女と向き合った。己への呼称へは首肯で返して、自然と手の平を差し出したのは今時珍しい行為かも知れないけれど。――握手を求めるのは、あの頃とは違う日向のような温もりを有した手の平。「最初から格好悪いところ見られちゃったなぁ…。」なんてぼやいて見るのは、戯れのひとつとして。)

[25] キミみたいに世話が焼ける人が周りに多いからね…──なんて。 Name:辻村柏 Date:2012/03/08(木) 21:11

(今、眼前に見出している笑顔は己だけへの笑顔では無い。昔とて其れは変わらなかったけれど、時折、己だけの為に向けてくれる笑顔が確かに在った。でも、今の彼の中には其の記憶すら無いのだろう──全ての人に向けられる優しさ、昔は其の優しさすら愛おしかった。でも、どうして今はこんなに悲しい気持ちになるのだろう─、)そ、か……平気なら良い、んだけど。私?あぁ、私は全然大丈夫。被害とか、全然受けてないから。──趣味の実験、…か。……わかるよ、善法寺がやろうとしてた実験。詳しく説明されても、全部理解出来る。……──好きなんだね、そうゆう事するの(己を心配するかのように掛けられた言葉には、なるべく平静を保ちつつ言葉を紡いでいこう。遠い昔の時のように、己の感情を悟られないよう取り繕う事は自然と出来た。確かに鼓膜を揺らす言葉の内容を、己が理解する事は容易だった。何度も楽しそうに話す彼の姿を見てきたから、己も其の内容を理解しようとたくさん勉強したから。どうして、そんな事ですら覚えているのだろう。突きつけられる現実は、己を苦しめるばかりな筈なのに──変わっていない彼の全てが、愛おしくて堪らない。不覚にも、こうして会話が出来ている事に幸せを感じてしまっている。辛いと思わなければいけない時間は、彼の存在のおかげで幸福へと変わる。そんな己は、存外単純なのだろうか。忘れているのならば、伝えていくしかないだろう──もう一度思い出を作っていくしか無い。我乍ら下手な嘘だと思った言葉すらも、容易に受け入れてくれる彼の事を双眸の中に捉えると、切なそうに─それでも、柔らかく微笑んで)優しい、…なんて事無い。善法寺の方が、ずっと、ずっと優しいよ。──うん…凄く凄く大切な人。とても、大好きな人(無垢ならば、伝えてしまえ。貴方の事だよ──と、言葉を付け加える事は出来なかったけれど、今は此れで良い。優しそうに向けられる言葉の数々に、胸が暖かくなる。結局、彼に救われている。此の暖かさは、想い結ばれたあの日と何ら変わりない。そう思えば、あの日もこんな陽気が良い日だった気がする。落ち込み加減だった、視線と気持ちと彼から逸らし、窓の外へと向けると──其処には満開の桜が。桜色の暖かな陽気に、自然と笑顔が零れた。「こんな暖かい日に、化学室に篭りきりなんて勿体無いよ。」と、言葉を紡いだ理由など分からない。ただ、なんとなく伝えたかった。)…もう、それ…ドジとかの域を超えてるよ。…ははっ…──!もう、ホント…ドジのレベル高すぎっ…天然だよねえ。──此方こそ、これから宜しく。善法寺(追求してしまった時は、悪い事をしたかな?とも思ったけれど、あまりにも無自覚すぎた其れを目の当たりにすれば、思わず肩を揺らして笑ってしまうのだろうか。差し出された手を見れば、笑いは収まるのだけれど、前よりはずっとずっと自然な笑顔を向けて──其の掌に、己の掌を合わせよう。昔とは違う温もりだけれど、己が大好きだった温もりには変わりない。)…じゃあ、私そろそろ委員会があるから。化学室の掃除頑張ってね?後、明日はちゃんとクラスに来るように…──忘れちゃ駄目だよ(悪戯を含んだ声色で告げれば、名残惜しいけれど其の手を離そう。始まったばかりの物語、忘れられているからといって終わりじゃない──だから、今は此の温もりに縋らずに、歩き出そう。「また、明日ね──」生徒会室への道を歩き出した時、一度振り返れば、ありきたりなそんな一言を。そう、あの時の決別と違い、今度の別れにはまた明日があるから──だから、再び前を向けば生徒会室への道を歩みだそう。)

[26] はは、ご面倒をおかけします。……気をつけよう。 Name:善法寺伊作 Date:2012/03/08(木) 21:12

(時折彼女の眸が寂しげに揺れるように思えたのは気の所為だろうか。保健委員として出会いの機会は多い善法寺であったから、其の目的と合わせて人を見る目は其れなりに養われていた筈なのだけれど。其れが確かな確証は何もなく、初対面で踏み込むほどに無神経ではなかったものだから、結局は心配は話題に乗せて流されてゆく―。)そう?迷惑かけてないなら良かった…。――ほんとう?大体ついていけないって言われることが多いんだけれど、…もしかして、辻村さんも好きなの?そうだね、ぼくも…、うん。好き、かな?(訳の分からない話だと一蹴されると思っていた其れに、意外にも好意的に返される答え。女の子にもこんな話題に興味がある子がいるのかと意外そうに瞬きながら、好きだと問われれば少しだけ答えを考えた。面白いし考えていた通りになると嬉しくもあったけれど、好き嫌いで考える事が少なかったのは其れほど自然に馴染んだ行為であったからか。丸でそうする事が当然だったかの如く、何かに導かれるようにして至ったのは若しかしたら魂への刷り込みがあったのかも知れないけれど、今の善法寺には知らぬ事だった。特に可笑しな点はないように思えるのに、僅かながら頭の奥が違和感を覚えるような、そんなささやか過ぎるサインには気付けやしないままに、其れよりも不思議と彼女との会話へ安心感を抱いていた。丸で旧知の仲のように自然と言葉が零れて、彼女からの言葉も、とても優しく胸に響くから。)そんな風に言われるのは、初めてだな…。――……そっか。(初対面で数言の遣り取りしかしていないのに、彼女の声からお世辞のような色が窺えないのだから不思議だ。大切に涵養した想いに息を吹き込むように、誰かを愛しむ彼女のかんばせは幸せそうで。少しだけむず痒いような、照れ臭い心地がした。彼女の視線が移り、其れを追って視界に捉えた淡桃がはらりと風に舞っている。きれいだねと声をかけようとしたところで彼女の言葉が先をゆけば、「そうだね、外でのんびりしたいや…。」と賛同に首を縦にした。満開の桜を見つめながら、懐かしさに似た感慨が胸を満たして―。)…いやあ、ドジというより、ぼくの場合は単なる不注意というか、熱中し過ぎて周りが目に入らないというか…、あ はは…。(日付とて、ポケットにねじ込んだままの携帯を確認していれば知れただろうに。彼女が遠慮なく肩を揺らすさまを見ながら、気恥かしそうに頭を掻く事で誤魔化して。そうして重ねた手の平は、友人としての始まりとなるのだろうか。まるで随分前から己を知っていてくれているかのような居心地の良さは、其れが“ような” ではなく其の通りであるとも知らないままに、其のあたたかさが何かに似ている気がして内心でちいさな疑問を抱いた。)ああ、うん。引き止めちゃってごめんね。ありがとう。辻村さんも 委員会頑張って。…はは、了解。明日こそは、教室でね。(右手を上げて「また」と短く告げて去りゆく彼女を見送れば、つまり己にも委員会があるのだろうと考えて一度化学室に視線を移す。何が壊れた訳でもなしに直ぐに片付けが終わるだろうと思えば、早々と終えて先ずは己がどの委員会に所属する事になったか―十中八九答えは出ていたが、念の為―確認しに行こうと、身を翻せば白衣の裾がふわりと広がった。そんな風の動きに何気なく視線が移って、其の柔らかさに窓の外の景色を思い出して再び足を止める。はらはら、ふわりと慎ましく咲き誇る穏やかさに、ふと先程抱いた疑問がかちりと音を立てて解に填って、覚えず様相が綻んだ。そうか 彼女から感じるあたたかさは、春の陽射しに照らされたソメイヨシノによく似ていたのだと―恥ずかしげもなく答えを見つけて、再び化学室の中へ足を踏み入れてゆく。明日また会えるのか、と重ねて思った言葉の意味を、深く考える事はしなかったけれど――。)

[13] 2012/01/16 (Mon) 02:09 Name:深冬 Date:2012/03/06(火) 22:05 [ 返信 ]
→(四年目の冬、学園中を駆けずり回る薄紅はきらきらと)

(名前に一字頂くは五年生への進級を目前に控えるこの季節、吐く息は白み指先悴む厳寒は突き刺す鋭さを以て早朝の空気を張り詰める。だというのに防寒具一つ纏わぬぼろぼろの薄紅が一つ、庭を駆けていた。自由参加と称して設けられた実力試しの実技試験に志願してから学園を空けたのは、たった三日間。されどそれがどんなに深冬にとって大きかったか。頬に乾いた土を貼り付けて、実技帰りの薄汚れた容貌も何のその、長屋付近の塀手前に目的の人影を捉えたならばぐんぐんと速度を上げ続け、体当たり同然に飛び付くのだ。例え引っ剥されそうになったって、なけなしの力込めた両腕は彼の首根っこにぎゅうとかじり付いて暫く抵抗するに決まっている。冷え切った身体全身で歓喜を表現しては、輝く喜色満面が紛い物の顔を仰ぎ、)鉢屋くん鉢屋くん、鉢屋くんっ!わたし、力試しの実技試験合格しました!一番に、言いたかったの!(―届かない、届かない。手を伸ばしても、追い掛けても、不敗神話を築くまでの実力者である彼に到底届かない。最初は元くノ一を母に持つ身として興味本位に手合わせ願い―見事、惨敗したのだったか。憧憬と執着を抱いた忍術で敗北を喫するのは我慢ならず、春頃にはほぼ毎日何度も何度も奇襲を掛けてはするりと躱されて―其処か掠りもしない事実に打ち拉がれたくノ一の卵は、その晩春を最後に彼の元へ足げく通うのを止め、今迄以上に只管鍛錬へと打ち込んだ。負けたくない、せめて近付きたい。そして何時しか彼の隣に並び立ちたいと、強く強くなりたいと願って、血豆を幾つもこさえて。―その努力が今日、ほんの少しだが確かに実を結んだ。いっとう苦手な獲物を選んで挑んだ此度の試験の手応えは入学以来最上級の代物で、それがただもう嬉しくて嬉しくて、いの一番に彼に報せたいと突き動かす心の儘こうして着替える間も惜しんで赴いた次第なのだけれども―面と向かって会話をするのは随分と久方ぶり、それも悔しさに唇を一文字に結んだのが最後というのにそんな事すっかり抜け落ちているのだろう、彼方此方絡んでもさりとふくらんだ髪を跳ねさせ好意全開で、人知れず育てた彼への想いを行動で示すのだ―、)


[14] 急ぎすぎ、慌しい…もう少し落ち着いた行動は出来ないのか? Name:鉢屋三郎 Date:2012/03/06(火) 22:06
(今日も今日とて何変わらぬ日が流れていた。彩りの変化も無い──穏やかすぎる程の日々は、一般からすれば喜ばしい事実乍、鉢屋からすればつまらないの一言。他人に言えば、どうゆう神経をしてるのか─そう罵倒されかねない神経ではあるものの、己からすればそれこそが常一定のリズムなわけで。強いての変化と言えば、最近随分と寒さを感じる季節となってきた事。後──いつも煩く傍に近寄って来る一人の存在が無い事ぐらいか。最近は、めっきり会う事も少なくなった、平気だと言い聞かせつつも妙な喪失感は、今日とて拭い去る事は出来ていない。結局、惚れた弱みという代物なのかもしれない。しかし、素直に認めるのはどうにも癪で、誤魔化すかのように自室から足を進めていた。迎えに行こう─とか、そんな子供みたいな思考を巡らせたわけでは無いけれど、偶然会えれば幸運。その程度─真っ直ぐ素直になれないのも、こうゆう時は面倒だな。──さて、あの煩い娘は何処かな?あくまでも、他人には悟られぬような立ち振る舞いで歩みを進めていると感じ慣れた気配を濃く受け取り、不意に立ち止まった。その瞬間、予想通りとばかりに己の身体へと人がぶつかってきた─否、飛びついてきたと言った方がこの場合は正解だ。随分と慣れた其れを華麗に受け止めつつ、なんとも歓喜に溢れる表情の人物を、今日ばかりは引き剥がさずに居てやろう、なんて思うわけで─、)んなに何回も呼ばなくても聞こえてる。こんだけ近ければな?──……へぇ、そりゃ良かったね。これで、深冬も俺の腰くらいには追いついて来たんじゃない?まだまだ、だけどな(バカにするような笑いをひとつ──でも、己の身体を通して感じる冷える彼女の姿を見ては、低い位置にある頭に手を乗せて優しげな手つきで撫でてやろう。いつも追いかけてきて、己だけを見てくれている彼女が、愛しい─そう思うのは、きっと嘘じゃない。手を伸ばして強引に手に入れるにしては、愛おしすぎる、大切にしたい─なんて普段からすれば滑稽にすら見える程の感情を湧き溢れさせるのは彼女だけで良い)お前は、本物のバカ。……そろそろ、俺の所に帰ってきてもらわないと困る。煩いのが居ないと張り合いが無くて、つまらないからな?……──おかえり、深冬(全ての意味を込めて、今はこの言葉を贈ろう。小さいながらも、柔らかな笑みも添えて───)

[15] 鉢屋くんのお好みとあれば奥床しい娘へ精進、…できますたぶん! Name:深冬 Date:2012/03/06(火) 22:07
(焦がれたひとが目の前で息をしている、それが声が弾む程愛おしく、装束越しに伝わる呼吸にうっそりと耳を傾ける体勢は以前妨害を受ける事なく甘受され、彼の首へと回した腕が体温の享受を許されたのだと理解すれば、流石にほうと安堵の吐息が漏れた。幾ら諦念抱かぬ覚悟があれど、一度剥されたら、再度追って飛び付ける様な体力は身体の何処を掻き集めても今は持ち得ぬだろう。)わかってます知ってます、だからわたし、全力で追いかけますよ!へこたれたりしません。絶賛成長期ですからねっ、あっという間鉢屋くんを追い越してみせます。(何よりも精神への恵みとなる言の葉受けては饒舌な口吻の反面消耗した身は蓄積した疲労に平素の力を欠て尚彼へ縋る腕を踏み留まらせるのだから、精神力とは中々馬鹿に出来ぬと胸裏に落す。名を呼ばれ、己の為だけに紡がれる言にどれ程の効果を有しているか、彼は気付いているのだろうか。そうして打ち震えた心が脈打つ度、冷えた心身へ血が巡るように彼の言葉が浸透しゆく心地好さに緩りと眼を細め―徐に頭上から伝達された感覚に瞠目。忽ちぽうと色付いた頬は幾ら寒風が撫ぜれど朱を走らせた儘、まあるくなった双眸が再び三日月描く頃には彼の体温がじんわりと指先を温めていて―一拍挟み、「ただいま帰りました」そう一音一音丁寧に紡いだ返事は明け方の寒空にそれは良く通った事だろう。されど其の余韻も残さぬ儘、滅多に拝めぬであろう微笑を網膜へ焼き付けんと睫毛をぱちりぱちりと幾度かしばたたかせ、)鉢屋くんはこれから鍛錬か何かですか?もしそうならわたし、ご一緒したいです。いえ、そうでなくともわたし授業迄の時間をご一緒したいです、駄目と言われても着いて行きたいです。…嗚呼逃げないで下さいね、今のわたしには逃げる鉢屋くんに追いつけるような体力が残ってないので、もし置いていかれたら待ち伏せ大作戦に移行します。何処にでも潜みます!(どう転んでも、結局この後の時間をまるっと明け渡して欲しいと言外に込めた我儘は、彼の纏う常と異なる空気が手放し難いからに他ならない。幼子が菓子をねだるように、それでいて拒否の先を先回りする小狡さを併せ持った“おねがい”は、果たして聞き届けられるか否か―、)

[16] たぶんって……──どうやら、期待は出来そうにないな。 Name:鉢屋三郎 Date:2012/03/06(火) 22:07
(束の間の幸せ──今の状況には、そんなお言葉がお似合いだ。今は、なんとでも言い訳を付けて此の抱き締めた温もりへの嘘を吐く事など楽は話。まして、己には他愛の無い事。精一杯取り繕った言い訳など、もう少し経てば語り始めるから─今は、今だけは、許される限りの甘い時間というのを過ごしてみよう。たとえ、彼女が己の事をなんとも想っていなく、己の独り善がりだとしても──。彼女が己を想い、恋焦がれて居るなんて所詮、想像の域に過ぎない。確証の無い勝負に、向かっていく根性なんて無い─結局、強がりつつも己は弱いのだ─。其の一面を隠すかのように、今は口角を上げ、常日頃らしい嘲笑うかのような笑みを零して)俺を全力で追いかけるなんて…変な奴だよ、お前は。決して良い趣味、とは言えないね。──…まぁ、俺も絶賛成長期中だから…せいぜい、追いつけるように抗ってみる事だな。ただし…俺を追いかけるのに、夢中で身体を壊すような真似はするなよ?俺が悪いみたく思われるからな─(何もかも裏返しの言葉。本当は心底心配しているけれど、己のものでも無い彼女を一線を引いて本質に触れないようにしてきたのは、何時からだっただろう。己から閉じ篭ったのに、不意の彼女の期待させるような一言や行動に触れる度に揺れる心は確かに在って。今も、弱い力乍も己を離さない此の腕の意を知りたくなるくらいには溺れているようだ。誤魔化し半分、からかいのように受け取ってくれれば良い─ぐらいの感情で伸ばし、触れた手。だった筈が、思わぬ引き金を引いてしまった。双眸の捉えた中の彼女の姿に、心が震えた。五年生として、勿論動揺など人の真意を写す瞳にすら宿す事は無いけれど、確かに心内は揺れた。何処よりも正直な部分は、彼女への気持ちにも素直なようだ。──当然のような返答にも、一拍置いて「あぁ」という一言しか返せない姿は、なんとも笑えた。二人で共に居る時の己の姿は、本人ですら想像出来ない程の変貌っぷり。周りは、何も変わらないと零すけれど──存外、そんな事は無い。今とて、柔らかな笑みを浮かべた、という過ぎた事実を認めたくなく、平静と変化無い表情に瞬時に移り変わる程度には)これから何をしよう──なんて事、まだ何も決めてない。ただ、何をするわけでも無く…何も考えて無かった。何をしようね。……なぁ、どうして?どうして、俺をそんなに追いかける?俺を追いかけたって、その先には何も無い。あー…いや、なんでもない…気にすんな──……ばかだな、…逃げるなって言われると逃げたくなる人間の性を知らないのか?──でも、待ち伏せされるのは其れは其れで厄介。だから…離さなきゃ良いんじゃない?俺は、自由だと逃げ出したくなる…掴まえておけば、済む話…なーんてな?(ずっと抱いていた疑問を尋ねるタイミングであったかどうかは、知らない。ただ、黙って無駄に過ぎていく時間を過ごすくらいなら、何か変化を求めようとしてしまうのは悪い癖かもしれない。それでも、やめられないのもまた、鉢屋という男なのだろう──)

[17] 何です、まさか本当に奥床しい姫君とかがお好きなんですかっ…! Name:深冬 Date:2012/03/06(火) 22:08
(こうして他者に扮した彼を見間違えぬ事とて当初は容易ではなかったが、すっかり馴染んだ調子で彼と彼以外を判断する術を人から問われたとして、春頃なら兎も角も今の深冬は胸を張って愛だと恥ずかしげもなく即答する筈だ。その成果も彼が腰を据えて欺かんとすれば振り出しに戻るのかもしれないけれど、生憎諦めの悪さは折紙付きなのだ。其れを示す一つが目前の身を捉えるこの拘束力の足らぬ腕で、ただただ彼が恋しくて堪らない。素顔が見られずともその身体が誰かの映し身でも、深冬は其の全てを引っ括めた鉢屋三郎を好いた。だからこそ趣味が良くないと揶揄されれば、自然くちびるも尖ろうというもので。―何故、彼が彼自身を卑下するかのように!其れが借り物の姿であるからか他の理由があるのかは決して計り切れぬけれど、軽口としても矢張り切なさ感じ、わたし存外趣味は良いのですよと拗ねた素振りで、巫山戯半分に繕って見せる。然し続いた気遣いとも受け取れる言葉には曖昧な相槌打ちただ笑みを返すに反応を留めて―くノ一になる為なら、貴方を追う為なら何を負っても、例え壊れたとしても構わないと口にしてしまえば、これでいて優しさ併せ持つこの男は、きっと叱ってくれるだろうから。けれど浮かび上がる表情を隠し切るには矢張り未だ未熟なのだろう、鳴りを潜めた笑みを口惜しく思う間も無く添えられた言の葉達に、くノ一の卵は強か鳶色の双眸を揺らした。)―まるで口説き文句みたいだと、鉢屋くんをつかまえていてもいいと、…言われているような気分になってしまうではないですか。(らしくなく語尾を震わせても、好機を見出せば大人しく頷いている様な娘ではない。彼の掴まえておけば良いと笑う口は、甘言弄したも同然で、瞬時ぶわりと心に湧き立つものがあった。何時もの軽口に過ぎぬとしても、戯言だとしても、彼の言葉なら例え嘘偽りであったとしても、背を押す効果は抜群にあるのだ。元より何故と問う其れに嘘を付く心算もなかったが、駄目押しの役目は果たされたと言えようか、―胸の裡に溢れる恋慕は、もう疾うに隠し切れぬ色をしている。最初は悔しさから追い掛けた―では今は?核心をつく疑問へ呈示する答えなぞ、一つしか―一つしか、)…それはもう、簡単な話です。鉢屋くんを心から愛しく思ってしまう自分が居るのです、全く以て困ったものですね。(堪らずくちびるから滑り落ちゆく言の葉を止める術を、深冬は一つだって知らない。―立派なくノ一を目指す手前、色に溺れてはならぬと、頭の片隅鳴り止まぬ警笛に密か微笑零し、とんと困った風もなく宣うくのたまは正真正銘、己の愛に生きる強欲な娘だった。だから鉢屋くんにはわたしに惚れて頂きますよ、昼食へ誘う如き気軽さを以て一途な愛をうたうのは、当然と言えば当然の展開で―、だが言い終えた直後ふと思い出したかのように僅か顔を顰めると、)大体ですよ、追い掛けた先に何も無いのか何か得るのか、そんな事はわたしが決めます。これだけは、幾ら鉢屋くんが相手でも絶対に譲りません!(宛ら幼子を窘める声色でそれだけ付け足せば、今度こそ満足気な笑みが広がった。)

[18] 誰もそんな事言って無い。大人しくすぎてもつまらないだろ──? Name:鉢屋三郎 Date:2012/03/06(火) 22:09
(短いようで長かった彼女を過ごしてきた時間──其の時間の中で、何度己を戒め、抑えを効かせて来ただろう。彼女に対してだけでは無い、今まで本気で何かをする事を常に避け、飄々とした毎日を送り続けて来た。鉢屋三郎という人物が、未だに多くの謎に包まれている原因は、きっと己自身に有るのだ。知らず知らずの内に、本音を伝える方法を忘れ、己と言う人物の姿すら不確定になりつつ有る。本来の姿を晒さない事、このどうにも出来ないひねくれた性格──他人から好かれるばかりでは無いのは、もう随分と慣れた話。己が興味が無い人間にどう思われていようが、全く興味は湧かない。そんな生活を続けて来た所為か、己の世界は狭い─とよく言われるのだが。他の人のように、作り笑いをして生活出来る程器用では無いのだ。だから今とて、眼前に居る彼女の事を掻き抱く事など正直な普段からすれば容易い。しかし、彼女の事だけは傷つけたく無いと思う己が居る。心内の想いが其れだけ本気だと言う証なのだろうが──本気だからこそ、鼓膜を揺らす言霊の内容を理解すると、くくっと静かに流れる時間には不釣合いな喉元を鳴らし、嫌な微笑を)……俺は、そう簡単には掴まえられないよ?…でも、…──俺が、深冬を掴まえる事は容易。むしろ、お前から掴まりに来るだろ…──?(挑戦的な口調で言葉を紡いだ後、近くにある彼女の顎に指を這わせ、柔らかに掴むと、くいっと持ち上げて視線を向けた。結局、会話のやり取りの結末は彼女に任せてしまうのか。仕掛けて来たのは、彼女──本気にしろ、冗談にしろ乗ってやらない手は無い。導くような欺くような言葉の中には、本音も含まれている事など彼女は気づかなくて良い。もし、全ての態度が夢物語という名の冗談だったならば誤魔化す事が可能だから。でも、其の全てが本物だったのならばどうするか──なんて考えては居らず。沈黙の中で不意打ちとばかりに木霊した言葉が、妙に耳に響いた気がした。なんとも軽い空気が漂っていたものの、決して何時も通り受け流して良い代物では無い気がして、緩い乍も真剣さを含んだ双眸で彼女を視界の先に捉えれば)簡単な話、な…──確かに、そうかもしれない。あぁ、困った話だ……現実かと疑ってしまうくらいに、困った話だ。でも、…一つ言っておく……──今から俺を惚れさせる必要は皆無。この言葉の意味、深冬なら理解出来るよな?(首元に巻かれた腕を解いては、静かに彼女を離した──信じられないような眼前に在る。しかし、其れを簡単に掴んで良いものか一瞬迷った──でも、己の心は迷いや三禁を犯す事より、彼女を求める欲を選んだ。少しだけ彼女と距離を取り、今度は此方から手を伸ばそう。艶を含んで、決して清らかとは言えない裏を含んだ鉢屋三郎らしい笑顔を作り上げると、口から発される声色はなんとも重く深いもの)変な所で頑固だな。……──深冬、其処まで俺を想うなら……お前のものになってやらない事も無い。俺を一緒に罪を犯して、堕ちていく覚悟があるなら……──この手を掴んで、俺のものになれよ。一度掴んだ手、一生面倒見てやる。此れを嘘だと思うか、本当だと思うかは……お前次第だよ(昼間の明るさには似合わない、言葉を並べて──所詮、己には綺麗なんて言葉は似合わない。しかし、待ち望んだ彼女と堕ちて行けるのならば、存外悪くも無い。)

[19] …姫君に鞍替えは流石に出来ないので、ちょっと焦りました。 Name:深冬 Date:2012/03/06(火) 22:10
(注がれる言と唐突な接触に酔い痴れる間も間すら与えずに、温もりを遠ざけた彼の真意をただ直向きに探す。引き離される際無駄と承知で一抹の抵抗を添えてはみた辺り、執着心の深さと慎みなさが窺い知れるだろうか―厳密にはまた躱されてしまうかもしれぬという積み重ねた経験に基づく反射をも含蓄していた抵抗であるの此処だけの話として。そうして堪らず湧き出る不満と物足りなさ如実な双眸で恨めしげに見遣り気を引く筈が、視界の中伸べられた手を捉えた刹那、すっかり如何でも良くなったのだ。―この意図に気付かぬ鈍感気取る心算はない、加えて鈍くもない心算だ。けれど確信に至るには自信がまだ足りないが故、今は彼の言葉を待たんと即座取るには至らずに視線を目先の面に固定し傾聴の姿勢を取れば吐息すら潜ませる。委員毎に見られる光景である薄汚れた風姿は珍しくもないにしろ、囀りもせず噤む口も凪いで見据える鳶色も稀有なる静けさ湛えじいと重苦しさ内包する言葉を受け止める其の様相は、借りてきた猫ともいえようか。ひと度情を向けた者の前でなら無休とばかりに朗々回る舌も此度は休息を甘受する儘に、全神経を彼へと集中し、研ぎ澄ませ――ややあってから、ほうと潰し損ねた息が季節相応に冷えた空気を僅か震わせた。)殺し文句です、其れ。…そして先程から思うのですが鉢屋くん、わたしのこととってもよく理解して下さっていますよね。―愛ですねっ!(三禁示唆しながらの誘いは何処迄も夢幻の如き甘美さ纏い胸裡に滑り込み、数瞬強く強く瞑目した先、再度彼の姿を映し出す鳶色が纏うはまごうことなき多幸感。茶化すような一言すら、割合は殆ど本心から抜け落ちた代物なのだから恋慕とは末恐ろしい。活き活きと活動を開始した舌とほぼ同時、一切の躊躇なく眼下に与えられた岐路に双腕差し出し両の手で彼の手を包み込めば、地面に伸びるふたつの影が繋がり―其の儘、ほんの少しだけ指を絡めて見せ、)そんな選択、あってないようなものですよ。…これで、鉢屋くんはわたしのもので、わたしは鉢屋くんのものです。(―浮き世を思わば斯様な恋、何時吹き消されるとも知れぬ灯火も同然なのかもしれない。やがてこの学び舎を後にし、生業とするのは決して後生が良いとは言えぬ其れ。ただの村娘として暮らす己の姿なぞ、深冬には上手く思い描けない。くノ一を志したあの日から、この道を進み行くと決めたのだから。けれど、どうせなら出来うる限り欲張ってやるのだ。足掻いた末にまんまと手に入ったら儲け物だろうとそう笑って在り続けたいと願う胸裡の儘、大層幸せな笑みを浮かべ彼に擦り寄るのだろう―はちやくんだいすき、そう幾度も幾度もあいをうたって。)

[3] 2012/01/15 (Sun) 13:38 Name:柏 Date:2012/03/06(火) 21:59 [ 返信 ]
→(春の暖かな陽気に、似合う笑顔を視界の中に捉えては─)

(任務を終えて、ようやく帰宅した時──忍術学園に咲く大きな桜が妙に映えて見えた。其れはきっと、先程まで任務をこなしていたからだろう。くの一として、最高学年として─容易な任務ばかりでは無い。でも、同時に学年が上がれば上がるにつれて、この場所に帰ってこれる喜びや感謝も人一倍となってきていた。入門票にサインを終えては、さて、何をしよう。報告が先か─それとも。まるで天秤の心を察したかのように、今までは全く何も感じなかった手に小さな痛みを感じた。視界を下ろし確認してみれば、どうやら移動中に木の枝か何かで切った様子、これで口実は出来上がった。なのに、その一歩を彼の居る保健室へと踏み出せないのは、己がひねくれ者の証拠。同室の保険委員の彼女に治してもらおうか─始末には、そんな事まで考え始めた。本音は、会いたいし、少しでも会話をしたい、関わりを持ちたい、心の奥底ではちゃんと思っているのに足は素直にはなってくれない。自己嫌悪──今の状況には、そんな言葉が一番似合う。誤魔化すかのように、己の頭に巻いていた頭巾を外し、包帯代わりに巻いて傷を隠そう。諦めて、報告へと向かおうと身を翻した瞬間、呼吸が止まったような感じがした。さっきまでずっと会いたいと焦がれていた彼が、視界の中に居るなんて──きっと、走れば間に合う。走れ、動け、そう暗示を掛けては彼の元へを急いだ)い、伊作………──!(己なりの精一杯の声で彼を呼んだ。視界に広がる彼の姿は、何ものよりも綺麗で、格好良かった。わかりきった事だけれど、何度会ってもそう思うわけで。先生達の部屋から出てきた辺りから何かの任務か、報告か、そんな所だろう。急いで来たため、乱れる呼吸を落ち着かせつつも、反比例するかのように身体の体温は静まる事を知らない。むしろ、上昇の一途を辿るばかり。近くに居る彼をまともに見る事も出来なくて、視線ばかりが浮遊する。なんて、夢心地気分の己を現実へと引き戻したのは、チクリと痛む手だった。思い出したように、そして、申し訳無さそうな表情を浮かべては頭巾を巻いた手を見せたのならば─、)任務の帰り道で…ドジったみたいで、少し怪我しちゃった。…治療頼んでも、良い?(実に控えめな声色で、ぽつり、ぽつりと言葉を零す。思い出せば、己が彼を好きなった理由も治療をしてもらっている時だった気がする。巡り巡って、戻ってきた──なら、この恋心は本物。結局、どんな道筋を辿ったって、彼に恋する結末は変わらない。気持ちが、念じるだけで伝われば良いのに──今は、怪我の事なんか忘れてそんな事を思うばかり。)


[4] 随分暖かくなってきたね。 こんな日はのんびりしたいなぁ…。 Name:善法寺伊作 Date:2012/03/06(火) 22:00
(忍に向いていないと言われ続けていた少年もついに最高学年に至り、地上を照らす暖かな陽射しがやわらかく輝いている。春めいた風がゆるやかに草花の香りを届け、善法寺を和ませては平和そうな顔だと級友たちに言い知らしめていたのだけれど、一年の頃から変わる事のない穏やかな気性の善法寺とて、五年間此の学園での日々を無為に過ごしていた訳ではないのだ。担任からの呼び出しに赴いた善法寺が与えられたのは明晩の忍務についてゆえに、平素と変わらぬ柔和な笑みで応える裏までもが平穏なだけである筈もない。こんな話にも随分慣れてしまったなぁ と抱く感想こそは、矢張り暢気なものだったけれど。横開きの扉を静かに閉めて教師の部屋を後にした――直後。春風の戦ぎを通り抜けて鼓膜を震わす其の音色に、ぴくり、足を止めて振り返ろうか。脳裏焼き付いて離れない姿は振り返るまでもなく浮かんだけれど、確か今日はまだ出ていた筈だったと記憶を手繰るまま、彼女の姿を確かめよう。飴色の双眸に映すだけで甘やかに胸中染め上がり、駆け寄る彼女にまなじりは自然と下がって綻んで―、)やあ、柏ちゃん。今帰ってきたところかい?(穏やかに零れ落ちる音は友人や後輩らに向ける其れと差異はなかっただろう。いつからか抱くようになった恋慕の情を隠し置く事を選んだのは忍を志す上では当然の事で、人辺りの好さを以ってすれば本音を殺す事は善法寺にとって容易い事であったから、世間話の声音で彼女を引き止める事も、恐らくは自然なもので。―けれどそんな折に視線を縫い止めた彼女の手を覆った頭巾に、重なるように彼女が控えめな願いを口にしたなら、僅か目を見張ってから顔を出しそうになる心配性を押し込めて微笑もう。彼女の口振りからしても大きな傷ではなさそうだから、遠慮も心配も取り払うように快く肯いて、)ああ、もちろん。それなら保健室で見ようか。もう少し我慢出来る?(そんな幼子を相手にするかのような言葉を紡ぎながら、自然と差し伸べられる手の平に他意などなかった筈だけれど。彼女に手を取って貰えようと得まいと、保健室を目指し先を歩く善法寺の様子は変わらない。其の裏で溢れるほどに浮かぶ言葉は、久しく彼女を見ていなかった気さえして気を抜けば零れ落ちてしまいそうだったけれど、呼吸と共に切り替える意識で脈拍を落ちつけて選ぶのは、当たり障りのない話題を。)任務はどうだった?六年ともなると今まで以上に気が抜けなくなってきたから、疲れも溜まってるだろう。そうだ。さっき食堂のおばちゃんの手伝いをしたら御褒美にってこっそりお饅頭をもらったんだけれど、よかったらあとで一緒にどうだい?(忍務の中身を訊ねる事はしないけれど、調子を訊ねては思い出すまま持ち掛ける誘いかけは友人として自然な音で紡げただろうか。本音は少しでも共に居られる理由を求めているだなんて、決して告げられそうもないけれど。)

[5] のんびりお茶にお団子…良いね。でも、そのまま寝ちゃいそう… Name:柏 Date:2012/03/06(火) 22:00
(内心の乱れなど悟られぬように表情を作るのは随分と慣れたもの。くの一として、感情を押し殺す事など他愛のない事なのに、彼を目の前にすると胸の奥から溢れる否定しがたい気持ち──素直に伝える事すら許されるのか曖昧な代物。そんな無駄な思考は己の意思に反して巡り、心に小さく暗い影を落とすのだ。彼が振り返るまでに考えていたのは、そんな些細な事。視界に捉えた穏やかすぎる程の姿には、弱い心が溢れそうになるのをグッと堪え、柔らかな笑顔を返そう。迷惑を掛けてはいけない、声色も表情もいつも通りに振舞えば大丈夫。己と彼の間を吹き抜ける温かな風に背中を押してもらい乍、自然と言葉を零してゆこう─、)うん…そう今帰ってきたとこ。よく……考えると着替えもまだ、だった……──つい、伊作の姿が見えたから追いかけてきちゃった…なん、て?(調子の良い笑顔を作り上げては、自然な言葉を並べられた筈。誰とでも人当たりの良い彼ならば、こんな事を言ってもきっと許される─そんな勝手な解釈をして、己の心を支えた。溢れ出してしまいそうになる甘い心をせき止め、緩く穏やかな時間を満喫出来れば良い、と。しかし、其の平穏の時間に訪れた彼の保険医としての優しさ─と、差し出された手。他意は無い、勘違いしてはいけない──言い聞かせつつも、「うん、ごめん。そんな痛くは無いから平気」なんて言葉と共に差し出された手を怪我をしてない方の手で握る己は駄目な奴かもしれない。彼にとっての当然の優しさが、今日ばかりは酷く寂しく感じられた。不意に落ち込む心持ちのまま、引かれるように歩き出そう─先を歩く彼の背中を見る事も出来ず、繋いだ手から何かを悟られてしまうのでないかという緊迫感に押し潰されそうになった。そんな妙に静かな空間を打破した彼の言葉には、ほんの一瞬返答するのが遅れてしまい)……あ、…今回はだいぶ楽な方だったよ。でも、立派なくの一になるためだからね、頑張るしかないかなって思う。…って…食堂のおばちゃんの手伝い?伊作…手伝いしながら、逆に不運連発で迷惑掛けなかった?なんて、冗談。へえ…お饅頭、良いね。うん、伊作が良いなら一緒に食べる。じゃあ、お茶は私が煎れてあげるよ(急な誘いには戸惑ったが、勿論表には出さない。治療を終えても、まだ、一緒に居られるんだ──それだけで心は喜びで鮮やかに彩られる。他人が聞けば、単純な話でも彼のひとつ、ひとつが己を一喜一憂させるのは紛れも無い事実。今は、今の時点では其れでどうにか我慢出来ている。俯き加減だった視線を上げて、栗色の柔らかな彼の髪の毛を見つめては、それ以上の事を口にする事なんて出来なかった。)

[6] きっと気持ちいいだろうね。…その時は傍で見ていようかな。 Name:善法寺伊作 Date:2012/03/06(火) 22:01
(密か心は若しかしたら些細な違和感となり互いに感じられていたかも知れない。感情を殺す事と同様に観察眼とて養われてきたのだから、共にある時間が長ければ長いほど、すべてを偽る事など不可能にも思える。其れは忍に限らずとも言えた話だろうか。親しいからこそ言葉無くとも伝わるものは、確かにあった。けれど彼女から少なからず向けられる好意が己が抱く其れと同じであればよいと願うのは余りにも己惚れめいていて、そして寝屋の御伽噺のようにあまいあまい夢だったのだ。彼女から感じる居心地の良さの意味を確かめる事はせずに、今日だって誤魔化すのは己自身だと云うのに。そんな偽りの友情とて幸いにしてしまえば、残りの一年も本心を隠し通せるのだろうと、信じて。)そんなに急いで会いに来てもらえたなんて光栄だよ。偶然に感謝かな?(語尾を上げた彼女を真似るように、善法寺も戯れに言葉を浸す。例え戯言だと知って、其れでも彼女の言葉一つで舞い上がる心内は正直だ。平素以上に緩みそうになる唇を堪えて、冗談は春の土のにおいに溶けて行くのみだけれど――差し出した手の平は無意識でも、彼女の細い指先が重なれば手の平は熱を持って自覚する。よかった、と本心から胸を撫で下ろした声は自然と落ちてくれたけれど、沈黙と共に彼女を連れ歩きながら騒ぐ胸裏は役得を利用する己に忸怩の念を過ぎらせていた。熱を伝える指先も、平素の体温の低さをもってすれば誤魔化せていたのだろうか。会話を重ねる事で彼女の意識が離れるように願いながらも、いっそ触れあったやわらかいところから、思いの丈が伝わってしまえばよいとさえ、思えて。)…そう、お疲れ様。特に此れからが頑張り時だものね。前より出かけることが増えて思うように会えないのは少し寂しいけれど、ぼくも柏ちゃんのことは応援してるから。無理し過ぎない程度に頑張って。……はは、今回はそんなに酷くは……、…なかったと、思うんだけれど…。もう、ぼくの場合冗談にならないって知ってるくせに。(会話に合わせて時折振り返って視線を投げながら、和やかな会話は続いてゆく。滲ませた本心と、少しの嘘と、埒もない遣り取りで良い友人らしく振る舞って押し隠す。均衡を保って決して崩す事のないように、「それは楽しみだなぁ。柏ちゃんの淹れてくれたお茶は好きだから。」と世辞とも取れる本音が語れば、胸の奥の靄がかった思いは燻ぶるばかり。何時からこんなにも誤魔化すようになってしまったのだろう。彼女にだけは誠実で居たくとも、友人の枠から出ない事が互いのためだと知っているから。辿り着いた保健室の扉を潜っても、互いの関係は変わりはしない。)…ちょうど出払っているみたいだね。準備をするから座って待っていて。頭巾は外しておいてもらえるかい?(目的地に着いた以上握っては居られない手を離す事に名残惜しさを感じながらも、対外的にはあっさり手放してしまえたはずだ。――無人の保健室内には様々な薬草の匂いが混ざり合うのみ。静かな室内は善法寺の城とも呼べる場所ゆえに、てきぱきと手際良く準備を進めては、そう彼女を待たせる事もなかっただろう。穏やかな時間の流れるホームは、逸る気持ちも落ち着けてくれるから――、)

[7] 伊作に見られてたら寝れないよ…ていうか、一緒には寝ないの? Name:柏 Date:2012/03/06(火) 22:02
(真正面から内心を語る事を避けるようになったのは、何時からだっただろうか。無邪気に思いの丈を言葉に出来ていた頃から比べると、随分と感情を隠す蓋は厚くなった。あのまま素直に成長していれば、此のもどかしい距離も縮まっていたかもしれない──そう考えては、滑稽な話だと己の心を笑った。これから進んで行かなきゃいけない道に必要の無い感情を伝える意味など、無い。己を傷つけ、相手を傷つけるのみ。分かりきった答えが眼前に有り乍、其れを無視する事などくの一の己としては許されない。なのに、どうして此の感情は消える事も、まして薄れる事もしてくれないのだろう。なんて、頭に浮かぶ理由の全てが、所詮勇気が無い臆病な己の言い訳にしか過ぎないのは確かだ)先生の部屋から出て来た…けど、任務か何か?偶然にっていうか…伊作を見つけられた私に感謝してよね?(なんて、嘘。本当は、己とて偶然に感謝したい。しかし、心内では不意に思う。偶然の出会いを待つ以前に、彼の事を探さずには居られたのか、と。身体は自然と彼と会う事を望み、探していたのでは無いかと──握った手の優しさに、そんな言葉が零れそうになる。手を通しても、何も変わらない彼の全てが羨ましいと思う同時に惨めさを感じてしまうくらいには、追い詰められているのかもしれない。此の平静の温もりが、今よりももっと暖かく感じられるくらいに、己を思ってくれれば良いのに─なんて、望まずには居られないのだ。友人としての距離が縮まれば縮まる程、もっと多くの事を求めたくなる。其れが、人間の性。くの一としては駄目だと言われても、人間としての感情を完全にゼロにする事など不可能な話。揺れる心情を制御しようと頑張れば頑張る程、空回りしそうで怖い─、)そうだね…──色々と頑張り時、かな。伊作も任務とか実技とかあるもんね。わ、たしは……伊作と思うように会えなくなるの凄く寂し……──っ、な、なんでもない!ごめん、忘れて。あ、有難う…伊作こそ不運なんだから、怪我とかしないように気をつけてね。……思うって…全然自信無さ気じゃん…もう、何してんの伊作ー。ね?伊作の不運が、半分くらい私に分けられれば良いのに(ぽつり、と小さな本音。これくらいは許されるかな─まるで、お砂糖のさじ加減を考えるかの如く慎重に言葉を選ぶ。いつも不運に見舞われて必要以上の怪我を負う姿を見る度に、心臓が締め付けられるように痛いのは嘘じゃない。それでも、小さな本音を零した後は普段と変わらない笑みを浮かべるわけで「お茶なんて誰が煎れても同じだと思うんだけど…とか?嘘冗談、素直に嬉しいよ。」喜ぶべき部分まで取り繕う必要は無い──要は本質までは辿り着かせないようにすれば良いだけ。保健室へと着いて、あっさりと離れて行く温もりを再度掴もうとする事はしてはいけないと、ちゃんと心得ている)わざわざ…ごめんね?でも、黙ってたら怒られそうな予感もしたし…此処は言うべきかと(苦笑を浮かべつつ、軽く巻いておいた頭巾を外し、適当な場所に腰を下ろして彼の準備が終わるのを待った。此の場で彼のする事全てから優しさが感じられ、暖かくて、つい──「伊作…っ……伊作が遠い、…遠い、っよ」彼に表情が見えぬように俯いて、口から出た言葉は隠しようのない限界故の産物──)

[8] そう?きみの寝顔を見ていたいのに。…一緒に寝てほしいかい? Name:善法寺伊作 Date:2012/03/06(火) 22:02
(幼さの残る少年の微笑は大人びた落ち着き崩す事はなかった。意志の強さを眸に宿した彼女の奥深くに触れる事もないまま、頬笑みだけに気を緩めては、安穏な語らいに首肯するのみで。)まあね。明日の夕刻には発つ予定だから、ほとんど柏ちゃんと入れ違いみたいになっちゃうね。ほんとうに その前に会えてよかった。…走ってまで声を掛けてくれたし?(僅かな本音が滲んでも、揶揄を着地させて何もかもまやかせれば良いと願う。勝気な物言いに期待してしまう心内は容易く灯をともすけれど、其れをどうしたいとは――否、どうしようとは、思っていなかったのだ。昔から――其れこそ忍術学園への入学が決まる以前から、善法寺は主体性を殺して献身的に他人へ接する事に長けていたから、望まれぬ感情を生かし続ける覚悟なんて持てやしなくて。其れでも指先からつたうあたたかさに、続けられた返答に、なお一層膨れ上がる慕情を喉に詰まらせて、此の儘彼女を掻き抱いてしまいたくなる衝動を殺す。嗚呼一体幾度、こんな事を繰り返すのだろう。)それに委員会もあるからね。…えぇ?ちゃんと聞きたかったのになぁ、勿体ない。ぼくだって本当はすごく寂しいよ。柏ちゃんと――それから鞠ちゃんや後輩たちとも もっと一緒にいたいもの。(思わせ振りに煽る言葉が善法寺を惑わせても、敢えて話の照準を逸らせば、次いだ労いには肩を竦めて「善処するよ」と笑う。そうして戯れに背を振り返っていれば、ちいさく鼓膜を震わす呟きに琥珀が揺れたのは一瞬。ゆるやかに眉を下げて笑みを含めば、少年にしては長めの睫毛がいちどの瞑目に上下して、いとおしむような柔らかさが零れた―)……ぼくは柏ちゃんには幸運でいてほしいよ。不運なんてない方がいいんだから。こんなのは ぼくだけで充分でしょう。(諭すような言葉の裏に、自虐や悲嘆は存在しない。あるのはただただ、彼女の幸いを望むものだけ。もしも彼女が己のように昏いこえに足を引かれて怪我など負えば――、そう考えるだけで気が気ではない。其れは少しだけ、他人と善法寺の間に引かれた、明確な一線のようでもあったけれど――。)そりゃあ隠されたら怒りますとも。怪我をした事は仕方がないし謝らなくてもいいけれど、柏ちゃんだってくのたまとは言え女の子なんだから。顔を怪我しないとも限らないし、気をつけないとだめだよ。(桶に水を張って直ぐに戻ってこれば、向けられた謝辞にも緩やかな音が小言めいた言葉で返す。忍を目指す以上どれほど死に近い場所に位置するかなど、彼女も充分に理解しているだろうけれど、其れでも彼女が傷付く姿は見たくはないと云うのが本音で。かたりかた、かたり―、二人きりの室内に準備の音が静かに響いて、そんな折にしずくのように落ちた声は、空気に溶ける事なく善法寺の耳に届いて揺さぶる。請うように、恋うように触れた彼女の弱さを、見過ごせるほどに強い意思は持ち得ていなかった。けれど喉に痞えた呼声はくちびるだけで紡がれて彼女に届く事はなかっただろう。準備を終えて彼女の向かいに腰掛けたなら、探す言葉は未だ歯止めを掛けようとして、)…ほら、手を貸して。先ずは汚れを落とさないと。この程度なら直に傷も塞がると思うし、痕も残らないと思うよ。傷が塞がって暫くは痒いかも知れないけれど、出来るだけ触っちゃだめだからね。(まるで聞こえなかった振りで、己の手の平で掬った彼女の手を水と手拭いで丁寧に拭ってゆく。やさしく触れる指先は先程引き連れた時とはまた違う熱を持って、緊張を孕んだ胸の内に押し寄せてくる。此の儘なかった事にするのは容易い。けれど其れでは彼女の発した救援の合図すら見放してしまう気がして、其れは裏切りにも似て刻まれる気がしたのだ。救いを求める人間を見過ごす事など、殊善法寺に至っては、有り得る事ではないのだから。まるで診察する手際で手拭いを下ろした手がするりと彼女の腕をなぞれば、やわく手首を掴むようにして黙し、細く息を吸い込んだ。瞑目と沈黙で遇して、ようやく唇を押し開けば、やわらかな音が落ちるようにと意識しながら、)――……脈が 速いね。 ……恋かな?(戯れのような言葉を、然し茶化す事なく声に乗せる。禁を犯す事よりも、勝ったのは欲か 其れとも救済と云う名の自己犠牲精神か。―本当は一番近くに居たいよ。きみが赦してくれるのならば幾らでも。そんな想いを潜ませて、其れが戯言として終わるかどうかは、狡猾にも彼女に託したまま――。)

[9] 寝顔なんて見ても楽しくないよ?…誰もそんな事言って、ないっ! Name:柏 Date:2012/03/06(火) 22:03
(幸福の瞬間が長く続かないと言うのは、あながち迷信では無いようだ。次、こうやって会話を交わせるのは何時になるかなんて分からない──曖昧な未来に、不安を抱きつつも今は笑顔を作り上げるしか無く。)そう、だね…──今度の任務は、どれくらい…掛かるの?伊作も会えて良かったって…思ってくれてるんだ?なんか、嬉しい……かも。いや…それは、こう…条件反射で!──……なんて、嘘だよ。ホントは、これ逃したら話せ無い気がして…ちょっと、慌てた……(なんて─と、最後は誤魔化すような苦笑を零した。本音を言う事を避ける生活に慣れてしまった所為か、こうゆう時に心内を言葉にするのは酷く難しく感じる。心を隠し、感情を殺す事こそ忍にとっては最も必要とされる事だとは重々承知の上。しかし、人を想い、愛おしく想う事すら許され無い忍の世界の残酷さを感じる事は、彼と居る時が殆どだ。其れは、此の想いが偽りの無い真実である事が浮き彫りとなる結果だろう。あまりにも、真っ直ぐで此の世には不釣合いな感情は、そろそろ押さえ込むには困難な代物と化してきているようだ。今すぐにでも、告げたくなる想いを心の奥に押し込めてやり過ごしてきた6年間──後、どれ程の感情を我慢で押し殺せば良い、考えれば考える程泣きたくなった)あぁ…そうだ、…今日も任務中に溜まってる仕事片付けなきゃ。良い…──言わない方が、良いから。伊作も忘れて。……うん、そうだよね。私も凄く寂し、いから……皆に会えない時間は(言葉の中の表現の対象を広くしたのは、己なりの取り繕い方。少しだけ視線を背けた後、すぐに柔らかに笑いかけてみれば完璧。決して、先程の言葉が嘘なわけでは無い──ただ、全ての中の特別が彼なだけだ。そんな彼から、発された言葉が聞こえてくると─思わず彼を見ずには居られなかった。痛い─怪我をした部分でも無く、そう、御伽話風に言うなら、胸が、心が痛くて、同時に幸福を感じるのは、己にとって当然の感情)伊作…──、でも、私は伊作にも幸せであって欲しいって思うよ。伊作が、人より不運で怪我して帰ってくる度に…心配する人居るんだから。…ばか、伊作……っ…(どうして、幸せな筈なのに─彼の優しさに歓喜する場面な筈なのに、泣きそうな程心が苦しいんだろう。泣いてはいけない─何時だって、笑って誤魔化して心配し続けて来たじゃないか。此処で、泣いては駄目だ──俯き、顔を隠すと堪えるように空いた手で口元を隠した。)ですよね…それに、伊作…怪我見つけるの凄い早いんだもん。隠しても、すぐバレるし…さすが、保健委員会委員長。…立派なくの一になる為には怪我も仕方無いと思うけど……極力気をつけます(やはり、彼と会話を繰り返していると柔らかな会話は抜け切れない。反省と誓いをたてるかのように、控えめな笑顔を浮かべながら緩やかな口調で言葉を返そう。──もう後戻りが出来ない言葉を発してしまったのなら、ハッとした。傷に痛みも忘れて、手は静かに震えた。己は今、何を口にした─?まるで、時が止まったかのように呼吸するのも忘れ、しかし、頭の中では今までに無い程多くの事が駆け巡っているわけで。言わなきゃいけない事は山ほどあるのに、言葉が出てこない。彼が振り返り、目の前に腰を下ろすのを確認すれば、視線を合わせる事は出来ず──治療への返答すら、言霊に出来なかった。何事も無かったかのように進んで行く時間、進んでいく治療。此れが終われば、一目散に逃げ出してしまえ。末にはそんな事すら考え始めてしまう。分からない、分からない──整理が付かなくて、いつもの冷静さを保てる自信が無い。彼が触れる腕が意思に反して熱を帯び、心臓の音が響く。駄目、駄目─そう言い聞かせて、治療半ば腕を引こうと思った思考は、彼の次の行動によって静止された。彼の行動に、腕が身体が震え、心が震えた。後、沈黙の中鼓膜を揺らした言葉に、己の中の何かが確かに弾けたのを感じた。外していた視線を彼へと向け、もう何の熱の所為なのかも分からない──酷く、熱く感じる手首を掴む彼の手に、己の手を重ねながら)好き、っ……──すきだよ、伊作っ…ごめんっ…ごめんね…っ…──!こんな気持ち、駄目だって分かってるっ……分かってるけどっ……好き、…伊作がっ(堕ちる音がした──其れでも後悔の念が無いのは、己が嫌な人間だから。くの一としての規律では無く、一個人の幸せを選んだ選択肢が正解かどうかなんて、今は考える暇も無かった。ただ今は、己に柔らかな手を差し伸べてくれた彼の優しさを離したく無いと思うのみ──)

[10] そんな事ないよ。きみならずっと見ていられるもの。はは、残念。 Name:善法寺伊作 Date:2012/03/06(火) 22:03
(大人たちに守られた箱庭で、あたたかな思いが膨らんでゆくのは必然にも近かったのかも知れない。感じるもの其の儘に吸収して、やがて思慮深さが身についたのなら、たったひとつの感情をくれるただひとりに、思いを寄せるのも当然で。相手が近しい者であれば尚の事、呼吸をするように自然に、恋に落ちた。幾ら自らの感情の機微さえ操る事に長けた忍のたまごでも、其の点に於いては何処までも平凡な 齢十五の少年だった。)…其れがどうにもはっきりしないらしいんだけれど、予定では三日程…、かな。――またそうやって。柏ちゃんはぼくを喜ばせるのが上手なんだから。……本当 尚更感謝しなくちゃね。いつも柏ちゃんが見つけてくれて、すごく嬉しいんだよ?(厄介なものだけれど頼めるか と教師から聞かされたのは数週間前の話で、既に何度か調査に赴いていて、いよいよ要である明晩のための最終確認の呼び出しが、先程の其れであった。相手方の都合で振り回されかねない不運は語るに至らないまま、だからこそ彼女と会えた事は善法寺には珍しい幸運で、喜悦を吐露するかんばせは、はにかむように好意と感謝を溶かした。いつか穴に落ちて誰にも気付かれる事のなかった善法寺を見つけたのも、酷く落ち込んだ折に声を掛けてくれたのも、いつも望んだ瞬間には 彼女が居た。其れが例え偶然だとしても、彼女の存在に恋をして救われた男が居る事が、ひとつの真実。だからこそ。善法寺の思いの丈を、忍の道を生きるべく進む彼女の枷には したくない。其れは禁忌を犯す事より、忌むべき願いとなっていたから。)忙しいのは分かっているとはいえ、会計委員会にはもう少し休んで貰いたいくらいなんだけどなあ…。――……そうだね。あぁ、そうだ。…ごめん。(戯言に混ぜたつもりで、本音が隠し切れていない事など分かっていた。冗談と云う曖昧な境界を越えぬよう、払い損ねた注意は時折ひどく恐ろしい牙となって、浮ついた頭を急速に冷やすような居心地の悪さで我が身に降り掛かるから。滲ませた苦笑も胸にささくれ立たせる要因にしかならない。――其れでも結局は、彼女の厚意にひどく救われるのだ。善法寺の幸せを願い、叱ってくれる人がいる。其れはなんとやさしい 愛だろうか。)……ぼくは充分幸せだよ。身に余るくらい。ぼくのために心配掛けたくはないけれど、でもそれだって、すごく幸せな事だと思うから。だからさ、不幸なんかじゃないんだよ。……馬鹿につける薬はないなんて、上手い事言うよね。(運が悪いからこそ知れたものばかり。其の上で彼女からの心配がいっとう嬉しいだなんて、余りにも身勝手で口にする事は出来なかったけれど。背に向けた声の暢気さに反して、すこしだけ繋いだ手に、力が篭った。)そうやって隠そうとする子がいるからだよ。さすがにこっちだって慣れるさ、まったく。…本当に、気をつけてね。(反省の色を見せる相手にまでしつこく小言めいた言葉を続けるつもりはなくて、然し釘を刺すように言葉を重ねたのは単に個人的な心配が勝ったゆえに。彼女が怪我をしないように守る事も出来ず、無事を願う事しか出来ない己の無力さに歯痒さが募っている事も、悟られる事はないのだろうけれど。――以前から感じていた特別な距離は、其の気になればいつだって明かしてしまえるものだったはずだ。其れでも彼女のためを思い確かなものにする事のなかった感情は、彼女のひいた引き金によって、一度は善法寺に委ねられた。誤魔化してしまおうと思った。誤魔化してしまえればよかった。けれど今までのようにそうする事は出来ず、ついに紡いだ音に彼女が手を取れば、知らず眉目に力が篭り、深く瞑目した。彼女から零れ落ちる度、胸の奥に押し込めていた本心が掬われて競り上がるままに泣きそうになるのは、かなしいのかうれしいのか 理由が悟れないまま。其れでもひとつだけ分かる事。彼女の手を離す事は決してないと―、)……謝らないで。だめなんかじゃないよ。誰が咎めても、ぼくがきみの気持ちを肯定する。……ぼくだってきみが…――、柏ちゃんが、恋しいよ。ずっと、ずっと前から、好きだった。互いに慕い合う事の 何が罪だっていうんだい。(呼吸が震えた。胸を満たす熱と、禁を破る恐怖と、ふたりで咎を背負う よろこびと。―とぐろを巻く感情は決してきれいなものばかりではなかったけれど、彼女に真っ直ぐ伝えた其れに、後悔など微塵も存在しない。手の平の熱が質量を増しても、面映く浮かべた笑みで琥珀色の眸に彼女だけを映し出すだけ――、)

[11] 私は伊作にずっと見られてたら緊張して…眠れないって、…ばか。 Name:柏 Date:2012/03/06(火) 22:04
(どうして恋に落ちたのが彼だったのか──とか、そんな事を語り始めたら時間がいくらあっても足りないように感じる。許されない気持ちだと示されれば示される程、止まらない心を止める術など今は無い。もっと、世間全ての人に祝福されるような環境で彼を好きになりたかった─なんて、今更な話。戯言だ。暗く、苦しい世界へと飛び込み生きて行く事を決断した今とて、世界を明るく照らしてくれる彼の存在に甘えたくなる事を我慢する事で精一杯なのだ。)三日……──じゃあ、ちゃんと三日後帰って来た時におかえりって言ってあげるね。約束。──…伊作には負けるよ?私の方こそたくさん幸せ貰ってるからね。……伊作は目立つから、すぐ見つかるんだよ。それに…私が会いたい時に、いつも居てくれるから……つい、甘えたくなる。駄目だね、私(自嘲気味な笑顔と共に、珍しく後ろ向きな一言が零れた。己が、求めた時にいつだって其の笑顔を向けてくれる彼の優しさに甘えてしまうのは己の悪い癖だ。差し伸べた手を掴んでくれる時間が永遠に続くわけじゃないと頭では理解してるのに、心の何処かで何時までも在ると信じてしまう。否、願わずには居られないのだ。忍として、明日の命すら保証されていないというのに──結局、弱い。どうして、引き寄せられるかのように彼を見つけてしまうのだろう。どうして、彼は何時でも離れられない距離に居るのだろう。そんな事実に何度も、何度も己の心を責めた。こんな感情は、これから己と彼が進んで行く未来に障害を与えるかもしれないのに、いつだって視界に彼の笑顔を捉えてしまえば。忘れようとする意志は揺らいで、そして、諦めてしまうわけで)潮江が何時でも気合十分だからねえ……まぁ、私も忙しいくらいの方が好きだから良いんだけど。これでも…最近、気をつけて休んでる方なんだよ?……人を治す仕事をしてる伊作が、自分を大事にしなくてどうするの。そんな当たり前の事、分かんないなら…分かるまで私が、何度だって怒ってあげる。私、怒ると怖いんだからね…──(本音と冗談を混ぜて、ぽつりと彼へと告げるのだろう。優しい彼は、己を大事にはしないから──自分よりも他人を優先する姿を今まで何度も見て来たから。全てを直せなんて言わない、己とて其の優しさが大好きだから。でも、せめて、せめて──自分自身を大事にして欲しい。愛しい人の気持ちを、己のちっぽけな言葉や行動で揺れ動かす事が出来るなら何度でも、何度でも伝えよう。)私ね…想うの。伊作にとっての幸せが、周りを幸せにする事だってあるんだよ。そうやって、人が人に幸福を与える方法だってあると思う……──個人的な話、だけど…私は伊作が幸せだって言ってくれた今の一瞬ですら……幸せな気持ちになれたよ(俯き乍も、鼓膜を揺らす柔らかな言葉の数々には、心がほっこりと暖かくなる。涙を潜めて、ゆっくり顔を上げると双眸に彼の姿を捉え、柔らかな微笑を浮かべるのか。其処には、多少ならず春色の暖かな雰囲気が流れている筈──)ごめん、って…──。気をつけるよ(重々承知したように、深く頷いて言葉を返そう。彼からの心配の言葉を聞く度に幸せになれるなんて、存外己も単純だ。──犯してしまった過ちを、やり直す事は簡単じゃない。今の状況にはそんな言葉がとても似合う。どうしたらやり直す事が出来るだろう、こんな風に彼を困らせ、迷惑を掛けた時間をどうしたら取り戻せるだろう──泣きそうになる熱を必死に抑えて、平静を振舞おうとしたのに、耳へと届いた言霊に一瞬呼吸が止まった─気がした。それくらい衝撃を受けた。逸らした視線を彼と交える勇気なんて無くて──でも、此の場に大きな変化をもたらした彼の言葉の真意を確かめなくては、と控えめな視線を向けた。其の先に見えた笑みには、我慢していた涙が溢れ。)これからっ…たくさん、…迷惑掛けるかもしれないよっ?たくさんっ…伊作を傷つけるかもしれないっ……それが、怖い。伊作を恋しい気持ちがっ…伊作の未来を傷つける気がして……、!駄目なのにっ……止まってくれない、…何度考えた、て……伊作に恋する結末しか無い、の(何を言葉にしたいのかなんて己にすら理解出来ない。ただ、涙と共に心の奥底から溢れてくる言葉を、口にするしかなかった。繋いだ手が震えている事を誤魔化す言葉なんて浮かばないくらい、恋焦がれた──)

[12] なら人肌が安心するって言うけれど、試してみる?…なんて。 Name:善法寺伊作 Date:2012/03/06(火) 22:04
…うん。約束。その時は、一番にただいまを言いに来る。――…だったら、お互い様だよ。ぼくだってきみに甘えているし、甘えられる時に甘えるべきだと思うから、…いつでもおいで。ぼくで役に立てるんならさ。(九割近くが飴を占める善法寺の対人方針は、己の感情も伴えば其の甘さを更に増して、容易く受け入れる言葉を零してしまう。其れは善法寺が保健委員である事とて免罪符にしてしまえたから、恋じゃなくても、言い訳とする肩書きなんて幾らでも用意出来るなんて楽観的思考回路が手伝っていた。其れは何より、今を 今目の前に存在する彼女を、大事にしたい、一心で。)充実しているのは何よりだけれど、文次郎はせめてもう少し眠ってくれればなぁ…。…うん、そうだね。前より肌が元気そうだもの。――はは、返す言葉がないや。わかってる。ぼくももっと気をつけるよ。こわーい柏ちゃんは、あんまり見たくないしね。(冗談に乗じて首肯しながら、彼女の優しさが胸の奥まで満たしていた。未だ己を大切にする本当の意味など理解出来てやいなかったけれど、少しずつ、少しずつ、彼女のために、己を心配してくれる誰かのために、出来る限りは尽くそうと思えるようにはなるはずだから。彼女の言葉は、どうしてこんなに胸に沁みる――、)そうなら…、……それが いちばんいいなぁ…。――ありがとう。やっぱり柏ちゃんは、ぼくを喜ばせる天才だ。(互いに幸せを分け合ってゆけるなら、何より幸せな事だろう。己が誰かのためになれるのならば、何よりの存在意義となる。幸せにしてあげられるのが彼女なら、尚更嬉しく、けれど少しだけ切ない。いつまでこんな風に彼女と分け合ってゆけるのだろう。其れが此の先ずっとでない事は解りきっていたけれど。其れでも今は。振り返った先の笑顔を琥珀の瞳に焼き付けて、幸福に―幸運に浸って、微笑んだ。――そんな幸いに、いつまでも浸かっていたかった。其れが無理だと解っていても、其れで求めずにはいられなかった。其の、形は変えてしまったけれど。二人で崩した関係は、其れだってきっと、幸福のかたちをしていたから。片手を外して、彼女の頬に指の背が触れる。溢れる彼女の涙が指をつたって、まるで彼女のこころに触れているようでひどく穏やかな感慨を呼び込んだ。どうすれば彼女の心を救えるのだろう。そんな風に思うのは、己のエゴかも知れないけれど、)…いいんだよ。そんな心配必要ないんだ。…ぜんぶ、きみなら受け止める。ぼくだってきみへの気持ちを止められなかった。…ねえ柏ちゃん。きっと何度諦めたって、ぼくはきみに恋をするよ。何度だって、必ずだ。……だから一人で背負わなくていい。迷惑なんてないよ。柏ちゃんになら傷つけられたって構うもんか。…――もう、いいんだ。…いいから。お願いだ。……とめないで。(駄目じゃない。其れでいい。彼女が何度否定しても、己が何度でも肯定する。其れは善法寺自身、望んでいる想いでもあったから―。溢れ出した懇願は、泣きそうな笑顔を隠すようにそっと彼女を抱き締めた。初めてこんなにも近くに感じる彼女のにおいに、奥底から安堵させられながら。瞑目して口を開けば、呼吸さえ耳に届きそうな距離で。)…其れにね。こんな事を言うとまたみんなに怒られると思うんだけれど、三禁なんて要は気の持ちようだって思うんだ。絶対に駄目だなんて言えないはずだ。…でなければ、結婚している先生方が立派な忍ではない事になるじゃない。……そういう考え方は、駄目かな?(忍に向いていないと言われ続けた善法寺だからこそ、事も無げにそんな言葉を口に出来る。自分たちからすれば先生方だって立派な忍であったから、其の屁理屈も幾らか説得力を持っていただろうか。空気を軽くするように柔らかに言葉を落として。そうして満たす。確かめる。此の想いが間違いではないように、彼女が罪の意識に苛まれる事がないように。祈るばかりで無力な善法寺に出来る事など限られていたけれど。だから何度でも、言葉を紡いで。此の瞬間が永遠であればよいと、願う事だけならば赦されるだろうか。鼓動の音が溶け合うくらいに抱き締めて。其の温もりを、今だけでも決して離さないように、)きみが許してくれる限り。ぼくは柏ちゃんを、愛してる――。


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